揺れる心情 (31/109)

―――――――……


あの日からほんの少しだけ、またみんなが元気になってくれた気がした。

それが嬉しくて私は胸を弾ませながら病院へと向かっていた。


今日もいい天気!

そう天に昇る日に手を翳すと、ピコンと豆電球が頭の上に浮かんだかのようにあることを思いついた。



「あ、そうだ!みんなに何か買っていこう!…喜んでくれるかな?」


何年か前、私はアメリカにいた。そこで入院したことがあるからみんなの気持ちはよくわかる。濃い味が好みの私には病院食の味つけは薄く感じた。
濃い味が好みとか体に悪いだなんて思わないでほしいなっ…!

幼かったこともあるだろうがやっぱり毎日ソレは辛くて。患者を考慮してのことだとは分かっているが、たまにはおやつくらいでも、と私は駅前のミスタードーナツに寄っていくことを決めた。


確か今は100円だっていうチラシが入っていたはずだしね!
お得な時に買わなくちゃ!

Uターンすることになるのだが、丁度良かったと足取りを軽くして駅前に向かって歩んでいった。



「6点で600円になります。ありがとうございました」


「みんな、喜んでくれるかなぁ」


私の分も含め、6個のドーナツが入っている箱を片手に、私はみんなが喜ぶ姿を想像してクスクスと笑った。

そして再び病院に向かおうとしたその時だった。



「あれ?朝比奈じゃないか」

「あ!風丸くん!」


振り返ったそこにいたのはいつもの雷門ジャージを着ている風丸くんだった。


「久しぶりだな。どうしたんだ、こんなところで」

「えヘヘ。みんなにドーナツ買っていこうと思って!ほら!」


私はへへっと笑いかけると手に持っていたドーナツの箱を風丸くんに見せつけた。それを見た風丸くんはいつもの優しい表情を浮かべて言葉を紡いだ。


「いいな、そういうの。今から病院か?」

「うん!風丸くんは今から練習?」

「いや、練習にはまだ時間があって…。ちょっとランニングしてたんだ」

「次はいつ出発?」

「今日なんだ。次は大阪」

「大阪かぁ…」


話に寄ると風丸くんは自主練習がてらこのあたりをランニングしていたらしい。

やっぱりみんなイプシロン戦に向けていっぱい練習しているんだなぁと嬉しさが募った。

その威勢に羨ましさも感じていると風丸くんはこう続けた。



「俺も一緒に行っていいか?なんか朝比奈見てたら最後にアイツらに会いたくなった」

「風丸くんも来てくれるの?ありがとう!きっとみんな喜ぶよ」


数時間もすればみんなはまた行ってしまう。出発する前に入院しているみんなに会いたいと風丸くんは言った。

円堂くんが来た時もみんな凄く喜んでいたから、今回だってきっとみんな嬉しいよね。

眉尻を下げゆっくり微笑むと、私達は肩を並べて稲妻総合病院へと足を向けた。




揺れる心情


この時はまだ、

私は彼の心情に気付けなかったんだ―…。



to be continued...

闇丸前兆。ちょっと寄り道してます(笑)

ちなみに夢主がアメリカにいたのは後々大切になってくるのかな…?
設定には書いてありましたが、ようやくここでその設定が登場です!!←

そしてドーナツ、本当に運が良かったです!!ストックためてた時期は100円じゃなかったので…。
今100円ですよね!?私の地域だけですかね…?

2012.6.29

[bkm]

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