その日が来るまで (28/109)
【半田視点】
「っ…。くそッ…」
体が思うように動いてくれない。
こんなんじゃ、ダメなんだ…。
もっと、もっと、強くならなきゃ。
こんな怪我なんかで立ち止まってられないんだ。
「はぁ…はぁ…」
上手く動いてくれない腕に、しばらくの間やっていなかったため衰えていた足を必死に動かしながら俺は目の前の壁に1つのボールを蹴りつけていた。
でも、どんなにボールを蹴っても感じるのは充実なんかではなく、虚しさでしかなかった。
体力の衰えを身を挺して感じると、俺はコロコロと転がってくるボールを見つめ、両手を膝に当て腰を屈むように肩で息をした。
「…っ……」
そして再び視線を上げると、微かにオレンジ色に染まる灰色の壁に向かってもう一度ボールを蹴ろうとした。
その時だった。
「半田くん!ダメェ!」
アイツの、アイツの声がした。
俺が想いを寄せる、朝比奈の声が。
その甲高い声に目を見開けると、俺は不覚にもバランスを崩してしまい俺の身体は外側へと仰け反ってしまった。
「しまっ…!」
「半田くん!」
そんな俺に気付き、朝比奈はダッと走り出すとあと僅かというところで倒れそうな俺を支えてくれた。
なんて情けないんだ。
そう俺は歯をギッと食いしばると、僅かにしか力の入らない左手に力を込めた。
「強く、なりたいんだ…。こんなんじゃ…っ…」
円堂を見ていたら、いてもたってもいられなくなって、気づけば外に出てボールを蹴っていた。
円堂みたいに強くなりたい。弱い自分は、嫌なんだ。
そんな想いばかりが俺の中で募ってきて。その感情が無意識に俺を動かしていた。
「半田くん…今は無理はダメ…」
再びボールを蹴ろうと身体を起こしたからか、朝比奈はやっぱりそんなことをしようとする俺を引き止めた。
時折痛む左肩に「っ…」と顔を歪ませながらも俺は支えてくれていた朝比奈の手を離させた。
「ねぇ半田くん…。」
朝比奈はそう優しい声でそっと囁くと目を細めて俺を見つめた。
夕暮れの光が当たりなんとも絵になる光景を目にし、俺は何も言えず息を呑んだ。
朝比奈はにこっと微笑みかけるとゆっくりと言葉を紡いだ。
「今は練習出来ないかもしれない。でも、いつかもっともっと強くなって…みんなを笑顔で迎えよう…?」
「朝比奈…」
「だから今は怪我を治すことに集中して、治ったら目一杯練習しよう!私、付き合うから、ねっ?」
そんな朝比奈を見て、その言葉を聞いて、俺は静かに微笑んだ。
「……ありがとう」
いつか、
その日が来るまで
俺は、強くなっていよう。
そう、誓ったんだ―…。
でもまさかこれが違う意味で果たされることになるなんて、
まだ俺たちは知らなかった…。
to be continued...
やりたかったばめーん\(^O^)/!!
やれて大満足大満足っ
ダークエンペラーズの前兆もなんとなく盛り込めたことですし!!
楽しかったです!!
いろいろ、言った台詞とかがキーになってくるんで…頭の隅にでも入れておいてくれたら嬉しいです。が随分後なんですね、これが…(苦笑)
もう1話、ヒロイン視点でどうぞ!!
2012.6.24
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