その一歩の裏には (15/109)
【半田視点】
何だか本当の自分の気持ちを見失いつつあり、俺はハァと深いため息を吐いた。
するとまた、病室の奥の方からマックスの声が響いてきた。
またかよ、なんて思いながらも「なにー」とだけ返事した。
まぁ、これまた俺にとったら飛んできた台詞は最悪なもので。
そのマックスの台詞に俺は何も答えずに、いや答えられずにじっと一点を見つめることしか出来なかった。
「半田、お前朝比奈のこと好きでしょ」
一瞬の出来事で思うように頭が働かず、何度も瞬きをして今の現状を理解しようとした。
が、やっぱり何度そのマックスの台詞が頭を駆け巡っても、俺から出る言葉は理解しきれていない言葉で。
「………は?」
思わず腑抜けた声を漏らすといきなりマックスは笑い出した。
「ぷっ…半田お前分かりやすすぎ…!だって…だって…!」
もう一度はははとお腹に怪我のしていない方の手で押さえると、足をじたばたさせそう声に出して笑った。
「は?って…。まさか半田自覚してないんじゃ…くっ…」
笑いすぎて微妙に涙目になるマックスを見ると、目を点にさせることしか出来なくて。そこまで笑う理由が分からず、1人ポツンと孤独にされた気分になった。
「先輩それは有り得ませんよ…!もし無自覚だったら俺、笑い堪えられな…」
「じゅ…十分笑ってるじゃないか少林!」
「半田さん…っ…、スミマセン…やっぱり俺笑えてきて…」
自分でも分かるくらい顔が火照るのを感じると俺は1人黙りこくった。
笑いが治まってきたのかマックスや少林、他のみんなもだんだん静かになっていった。
「……で。実際の所はどうなの、半田」
「…っ!」
急に静まり返ったと思いきや、今度はみんなの視線は俺1人に集まってくる。
「まだ聞くのかよ!」と反発してみれば、マックスは冷静に「だってまだ答えてないでしょ。」とニヤリと不敵な笑みを浮かべて言ってきた。
確かにマックスの言ってることは正しいけれども!
「あーもうッ!」と投げやりな態度で頭を掻くと、ハァと改めてため息混じりの深呼吸をした。
「……好き、だよ。だったら何なんだよ!」
もう何を言い訳をしても通じないだろうと俺は腹をくくり、逆ギレ気味にマックスにそう言うとなぜか少林と「イエーイ」とか言いながらハイタッチをしていた。
そんな様子にイラつきを覚えたがやっぱり本音は言えず「うるさいッ!」とマックスに自分の枕を投げつけ、また逃げるように布団に潜り込んだ。
マックス達にそんな変なこと言われて。俺は、改めて朝比奈が好きなんだと自覚した。
なんとなく、なんとなく自分の気持ちに気付いてはいたものの、確信とまではいかなくて。俺は自分の気持ちから目を逸らし、ずっとずっとその場に踏みとどまっていた。
そんな気持ちもあやふやで、何もかも中途半端なままで、だから俺はいつまでも前に出る勇気は持てなかった。
でも今日、こんな形だったけど、確かに一歩前進出来た気がしたんだ―…。
その一歩の裏には
マックス達がいた。
―…なんて、絶対言ってやるもんか!
(マックス…。枕返してくれないか…)
(やーだ!)
(………。)
to be continued...
無自覚では、ないはずです(多分)。
ごめんなさい、私の中で半田くんって照れ屋しかない。
ほかの方のイラスト見すぎたか…!!
2012.5.6
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