それが本音なら (14/109)
【半田視点】
しぶしぶ病室に入ると一番に目に飛び込んできたのは木から漏れる日差し。
ワイワイ騒ぐ様子を見て、俺は静かに自分のベッドへと向かった。
その話の中には朝比奈がここに残った理由もあった。
そんな話を小耳に挟み俺はじっと外を眺めていた。
ちらりと朝比奈を見ると、朝比奈はその木漏れ日に目を細め、微笑みながら部屋に飾ってあった花の水を入れ換えてくれていた。
「なぁ朝比奈。」
「ん?」
花を棚の上に置き、朝比奈はピタリと手を止めると、それを確認した後、俺は少し震えるような声で話を続けた。
「ホントに、ここに残って良かったのか…?」
「え……?」
思いも寄らない言葉だったのか、そう俺が言うと朝比奈はぽかんとした表情を見せた。
「何ていうかぁ…」
思うように自分の言葉の意味が伝わらず思わずそう呟くと、じれるように俺は頭を掻いた。
そしてついに意を決し、しばらくしてから少し照れくさそうに口を尖らせて言った。
「ホントは円堂たちと一緒に行きたかったんじゃないのか?」
やっぱり、俺はおかしいと思うんだ。朝比奈がここに残ることは。
俺達のため、というなら尚更…。
「そうだよ!わざわざ僕達なんかのために…」
マックスは俺の台詞に便乗して、そう朝比奈に言いつけた。それでも朝比奈の意志は変わらず、ニコリと笑うと言葉を紡いだ。
「全然平気だよ!だって私は自分の意志でここにいるんだから!」
その台詞が本音なのか、それとも俺達に気遣わさせないようになのか。
いまいち分からず「うーん…。」とうなだれると朝比奈はそんな俺達の様子を見てははっと笑った。
「そんな気にしないでよ!私がここにいたいだけなんだから!」
「そう、なのか…?」
「うん!」
朝比奈は俺の台詞に間髪入れずに返事をすると、俺はそれに一瞬パチパチと瞬きしたがにっと苦笑いした。
「入院する寂しさは…私もちゃんと知ってるつもりだから」
すると朝比奈は少し寂しそうな、優しそうな笑みを浮かべてそう言った。それが何を示すのか今の俺には分からない。
「朝比奈?」
「え?」
「どうした?」
「な、なんでもない!ごめんね」
その表情にたじろんでしまって。思わずそう問いてしまった。朝比奈はなんでもないと言ったが俺はピクリと眉を寄せた。
それから他愛もない会話を繰り返し、気づけばもう夕方。
それに気付いた朝比奈は時計を見ると立ち上がった。
「じゃあそろそろ私、お暇させてもらうね!」
「おう!」
「無理はしないでね!じゃあまた明日も来るから!」
マックスが元気よく返事をすると朝比奈はそう忠告だけし、ひらりと手を振ってこの病室を去っていった…。
それが本音なら
どんなに、嬉しいことなんだろう―…。
to be continued...
プロローグの半田視点バージョンです!!
2012.4.29
2012.6.16 加筆修正
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