赤と青と2つの影 (99/109)
「そんな、ことがあったんだねっ…」
「あぁ…ガゼルとバーンとかいう奴がな…」
私は夕方頃、雷門中での練習が終わった後、佐久間くんから連絡を受けた。エイリア学園が現れた、と。それに過剰に反応し、私は一度会えないかと返した。そして今こうして河川敷の芝の上で佐久間くんから話を聞いている。
佐久間くんの話に寄ると、練習試合が終わった後、空からボールが落ちてきて2人が率いるチーム、ザ・カオスが現れたという。ザ・カオスは2日後に試合を申し込み、消えただとか。
私は何より、ガゼルとバーンという単語に過剰反応した。
『選ばれたのです。ジェネシスが…最後の1人が…。恐らく今頃、バーンとガゼルは悪あがきにでも行っているでしょう…あそこに』
あそこに、それは恐らく帝国スタジアムのこと。悪あがき、それは試合のことだろう。
やっぱりそうだったのか、と私は眉を寄せた。
「試合は2日後、朝比奈は見にくるのか…?」
私はその台詞にきゅっと唇を結んだ。
私は目の前でキラキラ光る川を見つめながらポツリと呟いた。
見に行きたい。出来ることならば、そばで見守りたい。
だけど、恐らくあの人が許さないだろう。そう、瞳子監督が。
仮に行ったとしても、またきっとあの時のように突き放される。
「ごめんね…行きたいけど、きっと行けないの…」
「そ、そうか…。無理言って悪かったな…」
「佐久間くんは悪くないよ。また、結果とか教えてくれる…?」
「あ、あぁ…もちろんさ」
きっと難しい顔をした私を見て佐久間くんに気を遣わせてしまったのだろう。申し訳なさを感じながらも苦笑を浮かべた。
「それで、練習試合はどうだった?上手くいった?」
「あぁ!練習試合は上手くいったよ!鬼道たちもデスゾーン2を完成させた。本当に凄いよ…アイツらは…」
「でしょっ…みんなは凄いよ…!良かったね…やっと恩返し出来た…」
「あぁ…ありがとう、朝比奈も…」
「私は何にもしてない…。後は佐久間くん、あなただけだよ!早くサッカー出来るといいね!」
「ふっ…そうだな!俺らも鬼道に負けてられないな!」
リハビリ、頑張らなくちゃな、と続ける佐久間くん。そんな横でまた1つ、頭痛が私を襲った。だけどたった一瞬、一瞬だけ。気にすることはない。
私はただ純粋に笑う佐久間くんの横顔を見つめながらふふっと1人笑った。
「ごめんね…まだ完全に治ってないのに呼び出しちゃって…」
「構わないさ。ちょうどリハビリにもなったしな」
「はは…そんなこと言っちゃって…無理はダメだよ」
「分かってるさ」
さてと、と声を漏らすと佐久間くんは松葉杖を持って腰を上げた。もう日は沈む。あんまり長くはいられない。
「すまないな…送ってやれなくて…」
「もー何言ってるのッ?来てくれただけでも嬉しいんだからそんなこと言わない!」
ははっと笑みを浮かべると佐久間くんも浮かべ返してくれる。
「じゃあ、また連絡するな」
「うん!ありがとう!バイバーイ」
ゆっくりと家へと向かう佐久間くんの背中を見つめながら私はそう言葉を紡いだ。
角を曲がり見えなくなった。そんなときだった…。
また、私に追い討ちがかかったのは…。
一瞬ピカリと目の前が光って、赤と青に光るボールが私の前に落ちてきた。
軽い地響きと共に砂埃が宙を舞う。
そして、砂埃が去ったと思うと目の前には2つの影があった…。
赤と青と2つの影
なんで、また彼らがここにいるの―…?
私はただ、訳も分からず震えた…。
to be continued...
(2017.11.15)
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