いづあず


高校の3年にもなると進路のことを考えなければならない。18歳でこれから先の人生を左右するような決断をしなければならないって結構なことだと思う。この歳で自分の本当に進みたい道だとか、そんなことを明確に持っている人間なんてほんの一握りで、大抵はなんとなく、なんとなくだけど先に進んでいく。
俺も梓も、その真っ只中。

「梓は、アメリカだっけ」
「うん」
「へぇ」

迷いのない目ではっきりと言い切る。考えることも、それを臆することなく口にするところも梓らしい。

「射弦はどうするの」
「俺は普通に大学いくよ」

普通に、それは梓に対する小さな嫌みのつもりで、それに梓が気付こうが気付かなかろうが別に構わなかったけれどふいに口を突いて出た。やりたいと思うことを迷うことなく選んでいく梓を、羨ましいと、そう思っているのだろうか。

「射弦は夢、みたいなものないの?あんまり夢って言い方好きじゃないんだけど」
「どうして」
「だって夢って言ってたら叶わないような気がするから。本当に実現したかったら夢で終わらせたくない」
「なんていうか、梓だね」

その考え方が、梓。自信満々に僕は宇宙飛行士になるから、そう梓は言い切った。きっとそれを実現してくるのだろうと見えない未来だけれど、分かるような気がした。

「僕は僕以外の何者でもないけど?で、射弦の話」
「ああ、そうだった。…とくにない、そういうの。どこかに就職して無難に生きていられたらいいかな」
「そういう適当なの、あんまり好きじゃないけどそれでこそ射弦って気がするよ」

少し不満げな顔をしつつ、梓は言った。適当、そう言われればそうかもね。自分のことにも大した関心が無くて、将来に明確な目標もない。でもね梓、お前みたいに迷いなくそんなことを言えて、自分を持ってる人って案外少ないと思うよ。だからこそ、それが当たり前みたいに前を見据えている梓に敵わないなって思う。

「そうだ」
「なに?」
「強いて言うなら梓のお婿さんがいい」
「…」
「固まるのやめてくれない?」
「それ、人前で絶対言うなよ」
「嬉しいなら嬉しいって言ったら?」

思いっきり睨んでくるのは照れ隠しの徴だって分かってる。素直に嬉しそうな顔をする梓もみたいところだけど、そんな姿なかなか見せてこない。でもそれでこそ梓って気がするし、そこが好き。

「言わないよ、梓にだけ伝わればいい」

そう言ったら思いっきり顔を赤くした。なんだ。天才だ、なんだって言われてて驚くほどに自分というものを持ってたりしててもさ、梓も結構普通の人間だね。



君は輝かしき光


title:サーカスと愛人




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