梓と一緒に科学館にやってきた。なんとなくの思いつき、これといって目的は無かったけれど二人で出かけようと提案してきた梓を科学館へと連れてきたのだった。プラネタリウムもある比較的大きな科学館、中に入ると丁度プラネタリウムの上映時間だったから梓の手を引っ張るようにしてプラネタリウムの中へ入った。

「そんなに慌てなくたっていいのに」

なんて言う梓もどこか楽しそうにしているから、引っ張ってきて良かったなって思った。空いているところに並んで座り、倒れるシートにもたれながら上を見上げる。球状になったプラネタリウムの内部、ここにどんな星が映し出されるんだろうと考えるだけで楽しくなってしまう。横を覗けば梓の目も空をじっと見つめるようにしているのがみえる、きっと俺と同じような気持ちでいるんだろうな。なんてことに気付くとまた少し楽しくなってしまって。
ゆっくりと落ちていく照明と徐々に明るく輝いてくる星たち。映し出された映像だと分かっていてもとても綺麗、肉眼では見えない星たちもここではこの目でとらえることができるんだ。初めは有名な星座を中心に季節の星座を説明していくような内容だった。毎日勉強しているだけあって知っていることばかりだったけれど、それでも楽しく感じられるんだからやっぱり俺は星が好きなんだなあ。そのあとは宇宙の誕生についての映像。球体になっているのに見にくいこともなく迫力のある映像、どういう風に設定して作ってるのかなってそっちの方が気になってしまったりして。宇宙の始まり、ビックバンが起こって素粒子が、そして原子が生まれて、爆発を繰り返しながら元素が増えていく。そうして出来ていったのが銀河系、惑星。俺たち人間も元をたどってみれば星なんだって。今まで考えたこともなかったから、それはすんなりと胸に沁み込んで心の中に静かに落ち着いた。俺の好きで好きで仕方のない星、元を辿れば俺も星なんだって。死んだら星になるんだよって小さい頃に聞かされたけど、それもあながち嘘じゃなかったんだろうな。

上映の時間は短いわけではなかったのに、あっという間に感じられた。しばらくぼんやりとした後に、梓とゆっくりと外へ出た。

「なあなあ梓、楽しかったな!」
「そうだね。ねえ、翼。人間も星と同じなんだって言ってたの聞いてた?」
「聞いてた!俺そこにすっごい感動した!」
「僕も。なんか、嬉しかった」

梓が目を細めて笑う。自分の好きなものと共通の何かを見つけた時に人は喜びを感じる。梓が俺と同じところを心に留めていたという事実、同じように感じていたというこの事実に嬉しくなると同時に、俺の大好きな梓が嬉しかったと笑う姿を見れたことに喜びを感じた。

「梓が宇宙に行きたいって言うのは、きっと宇宙に帰りたがってるんだな」

大きな目を丸くしてきょとんとする梓。あれ、何かおかしいこと言ったかな?するとすぐに口元を緩ませた梓。

「うん。そうかもね」
「今、何バカなこと言ってるのって言われるかと思った」
「言わないよ、本当にそうなのかもしれないなって思ったんだから」
「そっか!じゃあ、俺頑張るな」

梓が宇宙に行けるように、俺が梓を乗せるロケットを作るから。宇宙へ行ってみたいっていう気持ちももちろんあるけど、それ以上に梓を宇宙へ連れていきたい、梓を宇宙へ連れて行くのは俺の作ったものであって欲しいと思うんだ。きっとそれは自分の欲求よりも梓を喜ばせたいっていう想いの方が強いってことなんだろうな。俺の夢は梓の夢の一端で、梓の夢は俺の夢の一端なんだ。

「僕が乗る宇宙船は翼が作ったやつじゃないと嫌だからね」
「当然!」

この場所に産まれた奇跡、星が僕らの元だとするのなら梓を宇宙に連れて行ってあげるためにその奇跡を使いたい。俺の一番の星はこんななんだぞって宇宙中に見せてやりたいんだ。


宙へと還る子供達







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