いつも君のことばっか考えてる

それこそ、24時間年中無休で!




「お腹すいたぞ!あずさー、ってあれ?」

四時間目の終わりを告げるチャイムがなると同時に教室内が騒がしくなる。翼も後ろの席にいる梓と昼食を取ろうと振り返るが、その席は空席。
そこでようやく今日梓は部活の大会だとかでいないことを思い出した。夕方には戻ってくると聞いていたが、高校で再会を果たし、同じクラスになって更に恋人という関係に発展してからというもの、ほとんど二人で一緒にいた。だから余計に隣にいない寂しさが募る。
授業中も激しく自己主張していた腹の虫もぴたりとやんでしまって、かといって教室に残る気にもなれずに翼は屋上庭園を目指した。



「今日も天気がいいのだー」

そよそよと優しい風が吹く屋上庭園にはランチを楽しむ生徒がそれなりにいた。隅の方にいれば気にはならないだろうと思い、翼はそこでごろりと仰向けに寝転がる。
青い空に、ぷかぷか浮かぶ綿菓子みたいな白い雲。もしもあんなに大きな綿菓子があったなら、梓と一緒に食べたいな、と妄想を膨らませ幸せな気持ちになると同時に、今日は隣に梓がいないことに落ち込んだ。

「…早く帰ってこないかな」

ゆったりと流れる雲を目で追いながら呟いた言葉は風にさらわれていく。
今日だけは生徒会をサボって校門まで迎えに行って、驚く梓を抱きしめたい。きっと照れながらばしばし叩いてきたりして、可愛い反応をするんだろうな。
でれっと緩んだ頬はそのままに、翼は丸くなって眼を瞑った。



+++



「――…いい加減起きろ、馬鹿!」

ごちん、と鈍い音共に頭に衝撃がきて翼は跳び起きた。痛む場所をおさえながら混乱する寝起きの頭をなんとかまともに動かす。視線を上へとあげていくと、夢の中でも隣にいた愛しい人。けれどその人は夢の中のように笑ってはおらず、少し怖い顔で仁王立ちだった。

「ったく、こんなところで寝て風邪でも引いたらどうするんだよ」

「――梓!!!」

夢でも妄想でもない本物の梓を目の前にして先ほどの痛みなんて一瞬で吹き飛んでしまう。がばっと抱きつかんばかりの勢いで迫ると、また頭を叩かれてしまった。

「うぬぬー…痛いのだ、梓ぁ」

「何か言った?」

にこりと笑いながら首を傾げる梓はかわいい。けれど眼が笑っていない。眼が。本当に怒らせると怖いので、翼はぶんぶんと首を横に振る。その反応に梓は満足したのか頷いて、はい、と手を出してきた。

「ぬ?」

「帰るんだろ?」

「うぬ!」

翼は大きく頷いて梓の手を取って立ち上がる。そのままその手をぐいっと引っ張って梓の身体をぎゅっと抱きしめた。同い年ながら身長に随分と差があるため、梓は文字通り翼の腕の中にすっぽりと納まってしまう。梓としては抱きしめられることは決して嫌いではないが、如何せん身長の差というものは複雑なものであるため、素直に喜べない。

「暑苦しいんだけど」

「今日、俺は梓がいなくて寂しかったよ。……梓は?」

ぎゅうぎゅうと抱きしめながらいつものお調子者はなりを潜め、梓にしか見せない“翼”になっていた。本当に大きな子供みたいで、面倒はあるものの、梓には翼を突き放すという選択肢がない。
ねえ、と答えを促されて、梓は小さく溜息をつくとぼすっと翼の胸に顔をうずめた。

「……まあ、寂しかったよ。静かだったし」

静かなのに落ち着かなかった、と呟いた梓の顔は見えない。けれど翼には今梓がどんな表情をしているのか手に取るようにわかってしまう。さらに仄かに朱色に染まった耳が梓の状態を知らしめた。

「ぬははっ、梓は可愛いな!」

「ちょ、うわっ」

翼の腕が梓を持ち上げた。いつも見上げるだけだった翼の顔が真正面にあって、目を合わせることが出来ない。そんなことはおかまいなしに、翼は満面の笑みを見せると、梓の唇に触れるだけのキスをした。

「…翼、ここ学校なんだけど?」

「梓が可愛いからいけないのだ…あだっ」

梓の羞恥心が頂点に達し、ゆるゆるの翼の頬をぺちんと叩く。その隙に梓は翼の腕から抜け出した。

「ほら、さっさと帰るよ」

「ぬいぬいさー! ね、今日一緒に寝ていい?」

「……ほんと甘ったれ」

「聞こえないぬーん!」


夕日に染まった屋上庭園にもうすぐ夜の帳が下りる。
今日の夢は絶対いい夢。だって隣には大好きな人がいるから。



end.



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いつもお世話になっております、眞柚さんからいただきました!こんなすてきなつばあずを誕生日にいただけるなんて…しあわせです(つд⊂)ありがとうございました!!
いつも一緒にいるのにいなかったら…とかもうもう…心ほんわかです。ぬいほまだけでなくつばあずも素敵すぎて…ごろんごろん!!ぜひぜひ、これからもよろしくお願いいたします(´▽`)

しぎみや



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