いづあい



どうしても見たい映画があったから、射弦を誘った。ぐちゃぐちゃドロドロ系のホラー映画で、ただ単なる好奇心というやつだったんだけど一人で行くのは怖かったから。射弦のことだ、めんどくさいと言われることを覚悟して誘ってみたら意外とすんなり承諾されてなんだか拍子抜け。どうせ遅れてくるだろうなーと思ったから映画館の近くのカフェで待ち合わせをすることにした。
そして当日。

「やっばい!遅刻!」

起きたら待ち合わせの30分前で、急いで行っても間に合わない。射弦、待たせちゃうかなー…。いや、あいつのことだ10分15分くらい遅れてくるだろうなー、かえって俺が遅れてってちょうどいいくらいかも。なんて考えながらできるだけ早く手を動かした。


到着したのは約束の時間から20分後で、店内を見回すと奥のほうの席に射弦が座っていた。駆け寄っていくと、こっちに気がついたようでいじっていた携帯から目を上げた。携帯いじってるくせに「どうしたの?」とかそういうメールのひとつもよこさないところが射弦だよなぁ。そういう俺も「遅れるから」の連絡ひとつしないんだから似たようなものか。

「ごめん、遅れて」
「おはよ、藍。寝坊でしょ?」
「う…」
「誘ったくせして寝坊とかありえない」

これでも急いできたんだからもうすこしやさしくしてくれたっていいんじゃないか!?なんて抗議の言葉が浮かぶけど、まあ射弦の言うとおりなので大人しく射弦の向かいに座った。

「ごめんって。結構待った?」
「別に、さっき来たとこだったし」
「そっか、よかったー…あ、一口」

射弦の飲んでた多分アイスコーヒーだろう液体が入った紙コップを手に取って一口すする。苦い、苦い苦い苦い、よくこんなもの飲めるなこいつ。そして気付く。コップの中の氷がだいぶ溶けている事に。さっき来たとことか言って、ほんとはもっと早くから待っててくれたみたいだ。

「藍、にやけないで気持ち悪いから」
「んー?いいじゃんいいじゃん」
「どうしたの、いきなり」
「俺、愛されてるなーって思って」
「意味わからない」
「俺が分かってるからいいんだよ」

ぐちゃぐちゃホラーよりラブストーリーが見たいなと思ってしまうくらいには機嫌がいいよ?今。



メルト、メルト、メルト







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