向かいあう二人、僕と翼。ひとつのテーブルをはさんで向かい合わせに座る、テーブルの上にはノートや教科書が広がっている。翼の方は関係のない教科のノートやら教科書までが開いてあるし、ところどころに消しカスが散らかっているし、もっと落ち着いて勉強できないものかなと思ってしまう。

「ぬぬー…梓ーここ、ここわかんない」
「どれ?」

シャーペンを口に挟んで突き出すようにしている翼はすでに勉強に飽きてしまっているようで、顔には"もうやりたくない!"という文字がはっきりと見て取れる。それでも座っているだけ、まだいいかな。翼に差し出されたところを見ると、それは大分前にやったところでそこが解らなければ今やっているところなんて全く理解できていないのではないのだろうか。

「翼、これさ…相当前にやったとこだよね」
「んー?そうなのか?」
「それさえもわかってないんだ…こんなんでテスト間に合うの?」

翼と一緒に勉強をしている理由、それはテストが目前に迫っているからだ。やる気のない翼を引っ張って一緒に勉強をしては見たものの、一向にやる気のない翼。今に始まったことではないのだけれど、毎回毎回呆れてしまう。そして、

「梓が教えてくれれば大丈夫!」

なんて言うもんだから困るんだよな。僕をなんだと思っているのか…お金を取ってやりたいくらいだ。

「毎回毎回教えるこっちが大変なんだけど」
「だって梓の教え方うまいから、梓に教えてもらった方がいい」
「…なんか納得いかない」
「なにがー?」

教えるのはいつも僕の方、なのに結果が出て見ればいつも翼の方が点がいい。これは一体どういうことなのだろう、できるなら普通に授業を聞いて理解して欲しいものなんだけど…。首をかしげる翼に疑問を一つ投げかけた。

「なんで翼のが頭いいのかなーって」
「んー、梓が教えてくれるから!」
「ん?」
「だから、梓が教えてくれるからだって」
「いや、意味が分かんないんだけど」
「俺、梓に教えてもらったことは絶対忘れないんだ。梓が教えてくれたって思うと頭にすぐ入ってくる、だからテストんときも分かる!」

得意げに、そして嬉しそうな顔をして言い放った翼に返す言葉が見つからない。

「…教えるの…やめよっかな」
「え!それはダメ!絶対ダメ!俺進級できなくなっちゃうぞー!」
「自業自得でしょ?」
「梓のいじわる!!」

そんなことを言って二人で笑って。すこしどきどきと鳴っている心臓はそのままに、シャーペンを握り直して教科書に向かった。ちょっとくらいならいいかもしれないな、なんて。そんなのはただの強がりだって、分かってはいるんだけど。

「ほら、教えてやるから」



君の言葉は正解しかない






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