真っ暗な部屋、ベッドに潜って目を閉じる。目を閉じても開いても視界は真っ暗、大抵目を閉じていればそのうち寝てしまうけれど、それでも今夜は全く眠気がおきなかった。枕元に置いた携帯電話に手を伸ばし、それを開いてみればディスプレイの明かりが眩しく痛いくらいに目を刺激する。デジタルの表示はすでに2時を過ぎていた。適当に操作をしてみたからと言って眠くなるわけでもなく、また目を閉じてやり過ごそうかとも思ったそんなとき、ふと翼の顔が浮かぶ。


to:翼
sub:無題
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寝れない


たった一行、どうせ起きてるわけもないだろうと暇潰し程度に送信ボタンを押す。するとしばらくして着信音が鳴った。メールの返信かと思って見てみると、それは翼からの電話の着信で、通話のボタンを押して携帯を耳元に持っていけば流れ出てくる翼の声。

『寝れないなら目閉じてればいいんだぞー?』
「してるけど、寝れない」
『ぬーん、俺になら効果抜群なんだけどなぁ』
「ていうか翼、起きてたの?もしかして起こしちゃった?」
『寝てたらなんか着信音聞こえて見たら梓だった。俺寝たら絶対気付かないんだけど、今日はミラクル!梓からのメールだったからかな?ぬははっ』

こういうとき、ずるい、と思う。反応なんてなくてもただの暇つぶし程度に、と思っていても心のどこかで何かしらの反応を期待して送っているわけで、それに無意識にも応えてくれる翼がずるい。こんな小さい出来事でさえ僕の心を揺らしていく。

「なんだか、翼の声聞いたら眠くなってきたよ」
『お、ほんとか?梓、明日もはやいんだから早く寝れるといいな』
「早いのは翼もでしょ。遅刻、しないでよね」
『そんときは起こしてー』
「はいはい。…翼」
『ん?』
「ありがと…おやすみ」
『うぬ!おやすみ、梓』

通話を切って目を閉じてみると不思議と眠れるような気がした。すると耳元でメールの着信音が鳴った。翼から。


to:梓
sub:Re
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わすれもの!

ちゅ!(^3^)/


メールの画面を見て思わず笑ってしまう。ほんと、翼らしいな。おかげで今日はいい夢が見られそうだよ。携帯を閉じ、暗い視界に身を委ねた。



ベッドサイドストーリー





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