入学式の準備をしようと一人で生徒会室にこもっているとふとカレンダーに目が向く。まだ3月のままになっているカレンダー、1枚めくると4月の面が顔を出す。
(そうか、今日は4月1日か)
誉が『部活終わったら生徒会室に行くね』とメールを送って来たのを思い出し、一樹は悪戯な笑みを浮かべた。今年は花粉が多く飛ぶと聞いていたから持ってきたマスクを口に付け、誉が来るのを待つ。



「遅くなってごめんね、一樹、ちゃんとお仕事してる?」

朝よりも大分暖かくなってきた午後、部活を終えた誉が生徒会室の戸を開いた。机に向かってだるそうにしてマスクをつけている一樹を見つけ、誉は血相を変えた。

「一樹、大丈夫?」
「ああ、少しだけ具合悪くてな」

少し咳き込めば、誉の眉がハの字になり心配そうに瞳が揺れる。予想通り騙されていると、一樹は内心おもしろがっていた。少しだけ甘えて今日はエイプリルフールでしたと言ってやろうと思っていたのだ。

「もう、具合悪いのにわざわざ学校来ることないでしょ」
「入学式も近いから仕方ねーんだよ」
「準備より、一樹の身体が大事」

はい、こっちにきて、と腕を引かれてソファの上に寝かされる。

「僕が膝枕しててあげるから、とりあえず一樹は寝ててください」
「え?」
「いいから、ほら、寝なさい」

優しく諭されて、これでは嘘だと言えなくなってしまったではないかと一樹は焦る。その横にすとんと腰を下ろした誉の膝の上に頭を乗せられ、どきどきしてしまう。

「…あのさ、誉」
「何?寝れないなら、頭撫でてあげようか」

にこりと微笑んでその手でゆっくりと頭を撫でる誉に、色々などきどきで何も言えなくなる一樹。

(甘やかされて嬉しいのはあるけど…)
(後が怖いな…これは)

誉の膝の上で静かに瞼を下ろす。そんな一樹を見て誉は小さく微笑んだ。めくり忘れていていつも誉が何日か経ってからめくっているカレンダーが机の上に置いてある。その月が新しい4月に変わっているのを見れば、悪戯好きな恋人が自分を騙そうとしているというのはすぐに分かってしまう。部活の時にも後輩たちが騒いでいたのを聞いていた誉は今日が何の日か既に分かっていたのだった。

(嘘でした、なんて言えないくらい騙されたふりしてやるんだから)



二人の想いを他所に、甘い甘い春の昼下がり。



愛すべき午睡



title:サーカスと愛人




April fool : side 1211



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