3月も終盤だと言うのに、まだまだ寒さは残ったまま。息を吐けば白い息、冷たい外気に手袋がいまだに手放せない。
「春はまだなのかな?」
「まだ寒いもんな」
「春の匂いはするのにね」
脇を歩く一樹は僕とは対照的で、手袋もなければ比較的薄着。
「ねぇ、一樹は手冷たくないの?」
「別に」
「ほんと?じゃあ手、貸して」
一樹の手を取ってみると冷たいどころかむしろ温かい。
「俺、手はあったかいんだよな」
「なんだか意外」
「だろ?」
「手袋するより一樹の手握ってる方があったかい」
「そりゃ、光栄です」
春色モノローグ
(手を繋いでいたかっただけ…だったりして)
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