「…はぁ」
君が新聞を開きながら溜息を吐くのは決まって被災の記事や各国の戦争、難民についての記事を読んでいるときだ。きっと今も例外ではないだろう。綺麗な心を持った君はそうやって他の人のことを思って心を痛める。自分が代わってやれたらいいのにと、どうにかできないものだろうかと。周りの人が傷つくくらいなら自分が傷つけばいいと考える君のことを僕はいつも見ているんだ。君の考えが悪いとは決して思わない。でもね、一樹。覚えていて欲しいんだ。君が他の人のことを思いやるように、若しくはそれ以上に、君のことを大切に想っている人がいることを。君は自分を犠牲にしようとするけど…そのことで悲しんでいる人がいることを、忘れないでいてほしい。
もし君が沢山の人のことを思って心を痛めるなら、僕は君のことだけを想って心を痛めるよ。そしてね、我儘な願いをするんだ。
この心の綺麗な人がどうかどうか幸せになりますように、と。
ただ彼の人の幸せのみを願い、
title:サーカスと愛人
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