「誉、それ取ってくれ」
「はい、どうぞ」
「あれおかしいな?計算があわねぇ…さっきのどこやったっけ?」
「この書類かな?」
「おうそれそれ、ありがとな」
「どういたしまして」

暇な時にふと生徒会室に顔を出すと、怠け者の生徒会長の仕事の手伝いをさせられることが常。勿論今日も例外ではない。

「ほんと、誉が来てくれると作業が進む進む」
「作業は溜めないでおいて欲しいんだけどな」
「お前が来る口実ができる」
「正当化しようとするのはやめてくれないかな、一樹?」
「はーいはい、悪かったよ。なぁ、あれ取ってくれ」

言われて立ち上がろうすると、丁度生徒会室の戸が開く。

「お、丁度良かった。翼、そこのそれ取ってくれ」
「それ?…ってどれだー?」

一樹が指差した方をきょろきょろと見まわす彼の方に向かい、棚の上に置いてあったファイルを手に取る。

「きっと、これ、かな」
「そう、それだそれ」
「ぬいぬいー!あれとかそれとかじゃわかんないぞー」
「それは翼の修行が足りないからだ」

きっぱりと言い切った会長様はなんと自分勝手なんだか。困ったものだね、といえば、天羽くんは腕を組みながら大きく頷いた。

「ぬいぬいのあれとかそれとか分るなんて、のっぽ先輩はいい奥さんになれるな!ぬいぬいはダメおやじだ」
「だーれがダメおやじだ!」

いつものように面白がってじゃれあいを始めた二人を横目に見ながら、小さく微笑んで心の中で言葉を繰り返してみたりして。僕があれとかそれとか分かるのは、それだけ一樹を良く見ているから。きっと逆だったら上手くいかないと思う。それでも構わないと思えるのは、彼が僕に信頼を向けてくれているのが分かるから。一樹は伝わらないと思うことはしない、分かると思ってくれているからあんな言い方をするわけで、それに応えられることが僕にとっては心地良い。
僕を頼ってくれたなら、その分応える自信があるよ。こう思っていること、君には届いているだろうか。


スケルトンコーリング


ver.0212




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