「なーなー、梓ってなんでぱっつんなんだー?」
「翼、次ぱっつんって言ったら口利かないからね」
「ぬぬー…笑顔が怖いぞー!」
「翼が悪いんだよ」
翼は覚えてないかもしれない。小さかったあの時のことを。


「うわ、目に髪はいった。いたた…」
「大丈夫か、梓?」
「平気だよ。それにしても大分前髪伸びたな」
目に掛かるほどに伸びた前髪を弄っていると横で翼がキラキラと目を輝かせていた。
「なあなあ、俺が前髪切ってやるぞ!」
「え、やだよ。絶対失敗するじゃん」
「ぬー!しない!絶対失敗しないから!なあいいだろ、梓。切らせて?」
小さい頃からこうなのだ、やったことの無いことには大きな興味と関心を抱いて、やりたい、知りたいと思う、僕には無いものを持った君。服の袖をぐいぐいと引っ張って懇願するのを止める術は無く、言っても無駄だと観念して頷くと翼はとても嬉しそうに笑った。
「ぬはは、じゃいくぞ」
「ちゃんと切ってよね」
「はいはい、分ってるって♪俺手先は器用なんだ」
「…あんまり信用できない」
目を閉じているとちょきんちょきんと鋏が進む音が聞こえて、前髪と額に翼の指が当たる。何だかくすぐったい感覚。
「ほい、できた!」
「げ、なにこれ」
目を開けて鏡に向かうと眉の位置でぴったりと一直線になった前髪。
「翼!なんでこんなぱっつんにしたんだよ」
「えーっと…一生懸命まっすぐにしてみました」
「まったく」
「嫌だったか?でも、その前髪の梓かわいいぞ」
「…可愛いとか言われてもあんまり嬉しくないんだけど?」
「ぬはは!梓かわいい!」


それからずっと変わらない前髪、だなんて、あのときの言葉が嬉しかったから、だなんて口が裂けても言ってやらない。


マジカルシザーハンズを貴方に





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