雪がしんしんと降ってくる。暖房をつけて暖かくした部屋の中、カーテンをめくって外を見れば夜の闇の中で雪の白さが際立って見えた。風もない夜、その様子はチョコレートケーキの上に白い粉砂糖を振り掛けたよう。甘いものが大して得意でない僕の頭の中にそんな表現が浮かんでくるのは間違いなく、この同じ空間の中に宮地先輩がいるせいなんだろうと思う。

「大分降ってますよ」
「明日は積もってるだろうな」
「そうですね。僕、雪って結構好きなんですよね」
「歩きにくいから嫌いだと言うと思っていた」
「ひどいなぁ。だって綺麗じゃないですか、星が降ってくるみたいに見えません?」

夜に見ると特にそう思う。小さな白い粒がゆっくりと空から落ちてくる、暗闇の中で白い雪が光る星のように。

「それに、」
「それに?」

勿体ぶって言葉を止めると催促するように宮地先輩が言葉を投げてきた。そんな先輩の顔を見て微笑むとすこしだけむっとされる。

「雪が降ってると周りの音がなくなります」
「…それが?」
「宮地先輩の声がよーく聞こえるんですよね、いつも以上に」

カーテンを閉めなおして、宮地先輩の隣へ向かう。ピタリとくっつくと、少し居心地が悪そうに眉根を寄せるもんだから、可愛いななんて思ってしまってりして。

「それに、寒いからっていう理由でいつも以上にくっついていられますからね」

覗き込むようにして先輩の顔を見ると、予想通り、恥ずかしそうに口をへの字にしている。嬉しくなってそのまま先輩の方に体重をかけてもたれ掛ったら、対抗するように押し返された。寒い雪の夜だけど、触れる肩口は十分にあたたかい。



チープな言葉を降らせて





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