「お餅ってなんでこんなに伸びるんでしょうね」

小さなお椀の中に入った白いお餅を箸で伸ばしながら僕が呟くように質問すると、隣に座っていた宮地先輩は口をもぐもぐと動かしながら考え込んでいた。

「さあ…考えたことがなかった」
「普通はそうですよね」
「ああ」

そして、また口にお餅を運んでゆく。真っ黒な餡子で覆われていて、白いお餅が見えないくらいのそれ。先輩のお椀の中には僕の倍以上あるのではないだろうかって量の餡子が入っている。ここまで甘いものが好きかと呆れてしまうくらいの量。

「本当に先輩は甘いの好きですよね」
「…」

伸びるお餅を綺麗に口の中に入れて口を動かす姿を可愛いなと思ってしまう。僕は宮地先輩が何かを食べているところを見るのがとても好きだと、最近になって気がついた。食べる動作がとても綺麗。たまに口にケーキをつけていたりするけれど、それはそれで可愛いと思う。ただしこの意見には完全に僕の贔屓目が入ってるのだろうけど。そして何より、甘いものを食べてるときに宮地先輩はこの上なく幸せそうに見えるから。ついうっかり可愛いですねと口走らないように気をつけなければならないほど。今日も例外なく。

「僕、先輩が食べてるところ見るの、相当好きみたいです」
「…訳がわからない」
「僕が分かってるから十分なんですけどね」
「だったら言うな!」
「先輩を困らせたくてつい」

恥ずかしそうに目を逸らす先輩の横顔を見ながら、笑みを浮かべる。本当に期待を裏切らない人だなぁ。

「先輩が食べてるのを見ると、なんだか美味しそうに見えるんですよね。甘いのがあまり得意でない僕にでも」
「実際に美味しいんだ」
「そうじゃなくて。僕が言いたいのは、そんな風に思わせちゃう宮地先輩が好きですってことなんです」
「…いいからさっさと食べろ」
「照れてますか?」
「うるさい!」

年明け早々、宮地先輩の眉間に皺を寄せさせてしまったかな。今年もやっぱり宮地先輩は可愛らしくて、さて、どうしたらいいだろうか。





食卓にならぶ宝石


title:発光





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