「もしもし?…ちゃんと届いたんだね、よかった。…はいはい、わかりました。休みになったら帰るからね。それじゃ、また」
「妹たちか」
「そう、ホワイトデーのお返しありがとうって。ちゃんと帰って渡せたらよかったんだけどね」
「お前らしいよ。…」
「一樹?」

何かを探すように机の引き出しを開け中を覗いていく。目当ての物を見つけた一樹は掌にそれを握って僕の方に差し出した。

「誉、手」

言われるままに出した手の上に転がった幾つかのキャンディは色とりどりで鮮やかだった。

「今日ホワイトデーだろ。それしかないけど、やる」
「バレンタインにチョコあげてないけど?」
「あ?バレンタインはお前が美味い茶をたててくれただろ」

いらないなら返せなんて、僕が返すはずないことを知ってて言う彼の顔は悪戯。ひと月前のことを当たり前のように覚えていてくれたり、普段甘いものなんて滅多に食べない君が机の中にキャンディをしのばせて置いていてくれたり、そんなことに気付くたびに、綻ぶ気持ちを抑えきれないんだ。君から与えられるものは全てが特別。何気ない一言も、この掌の中の小さな粒も。
そう、たとえば…


毒林檎だって構わない


title:パッツン少女の初恋



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