年末大掃除。僕の部屋は物自体が少ないから、比較的すぐに掃除は終了。きっと今年も大変なことになっているんだろうなと思いながら翼の部屋へと向かった。溢れんばかりのガラクタたち、どこにしまってあったのか逆に聞きたくなるほどの量のそれで翼の部屋の床は一面覆い尽くされていた。足の踏み場もないってこういうことか、と毎年のように思う。

「うわ!梓だ!手伝って手伝って〜」
「はいはい。まったく…なんとかならないの?この量」
「片付け苦手なのだ」
「聞かなきゃよかった」
「ぬぬぬー…そう言わないで!」

大きなゴミ袋を片手に片づけを進める。教科書類以外は大抵不用品に分類されるものばかりだから、ためらいなくゴミ袋の中へと放り込んでいった。
掃除を始めて数時間後、一通り綺麗に片付いて、一息ついたときに翼が大きな声を上げた。

「ない!!」
「ない?」
「ここに置いといたボールペンがない!!」
「ボールペン?あ、それならさっき捨てちゃったけど」
「捨てた!?なんで!?」
「だって1本だけ置いてあったからいらないものだと思って」
「違うぞ!大事だったから別にしといたのに…梓のバカ!」

怒り口調で僕に向かって暴言を吐く翼に苛立ちを覚えた。

「はぁ!?大事なら別のとこにしまっとけばいいだろ。何で僕がバカとか言われなきゃならないんだよ」
「一言聞いてくれてもよかったじゃんか!」
「先に言っとけばよかったんじゃないの?」
「ぬううう…もういい!梓なんてしらない!」

ぷいっと頬を膨らませて部屋の端っこのほうで座り込む翼。小さいときから変わらない、怒ったときはいつもこうだ。売り言葉に買い言葉とはよく言ったものだけど…言い過ぎたかな?捨ててしまったのは僕のほうだし。けれど、素直に謝る気にもなれなくて、そのまま二人して無言のまま部屋の中で座り込んでいた。

「ねぇ」

痺れを切らした、というより悪かったかもしれないと折れて先に口を開いたのは僕のほうだった。

「あのボールペン、なんでそんな大事だったの?」
「…」

小さく体育座りをしたまま微動だにしない翼は、口も開いてくれない。小さくため息をついて、諦めたように翼から目を逸らすと、ぽつりと小さく声が聞こえた。

「梓がくれたやつだったから…」
「へ?」
「あれ、前に俺がボールペンないって困ってたときに梓がくれたやつだったんだぞ」

唇を尖らせて寂しそうな目を向ける翼。僕は僕で自分の名前が出てきたことに驚いていて、しかもそんな覚えてもいないようなボールペンを翼はこんなに怒るほど大事にしていてくれたのかと考えて胸がぎゅっとしていた。急に心臓の音が聞こえる。

「折角大事にしてたのに…」
「えっと…ごめん」
「しかも年の終わりにけんかしちゃったしさ」
「翼がバカって言うからじゃんか…」
「仲直りしたいからぎゅってしてもいい?」
「…いいよ」

部屋の隅でちょこんと座っていた翼が僕のほうに寄ってきて、ぎゅーっと腕の中に抱きしめられた。喧嘩した割に、心の中はホカホカしていて…翼の体温があったかい所為かな?なんて、ドキドキする心臓を無視して無理やり理由を探していた。




ロマンティック・マテリアル


title:発光





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