隣でせっせとシャーペンを動かしている梓とは対照的に、まったく勉強をする気が起きない俺はぼんやりと考え事をしながら窓の外の景色を眺めていた。うっすらと積もった白い雪が綺麗だなぁなんて思ってたら、梓の肘が俺のわき腹を攻撃した。クリーンヒットしたそれに思わずうっと声が漏れた。

「なにするんだよ梓ぁ!」
「テスト前なのに随分余裕だね」
「だって勉強する気起きないんだもん」
「だったら帰れば?」
「それは嫌だぞ」

だって梓のそばにいたいから。テスト期間だと梓も部活が休みになって、放課後のこの時間を一緒に過ごすことができるようになる。それはつまりいつもより長く梓と一緒にいられるってこと。そのチャンスをみすみす逃すようなことをするものか。

「直前になって泣きついてこないでね」
「げっ」

また教科書とにらめっこを始めた梓の横顔を見ながら、また考え事を始める。テストの問題のように答えが簡単に出てこない、俺の頭を悩ませるそれ。『なんで梓が好きなんだろう?』考えても考えても、好きだ、という答えしか出てこない。理論付けて考えちゃうのが癖なのか、何かしら理由を求めてしまう俺はその答えをひたすらに考えていた。でも、やっぱり答えが見つからない。もっと正しく言ったら、答えを表す言葉が見つからない。好きだと思う気持ちはしっかりと胸の中にあるのに、それを言葉で表現できない。こんなに、こんなに想ってる気持ちを梓に伝えたいと思っても、的確にそれを表す言葉を俺は持ち合わせていなくて、ただ、どうしようもなく好きだと思ったから好きなんだってところで行き詰ってしまう。語彙が欲しいよ梓、言葉ってこんなもんなのかな。言葉じゃ俺の気持ちを100%伝えることができそうにないんだもん。

「何難しい顔してるの」

見つめていた梓の顔がこっちを向いて、疑問をひとつ投げられた。

「梓が好きだなーって思って」
「さっさと勉強しなよ」
「テストで100点取ったらキスしてほしいな」
「はぁ!?なんでだよ」
「梓のことが好きだから!」

結局はそれだけ。好きだって思う気持ちだけしか俺には分からないみたい。

「考えとく」
「やった!」

困ったような顔で頬をうっすら赤くする梓が可愛いと思った。そんな梓からのご褒美をもらうために、とりあえずは目の前にある問題を片付けてしまおうか。永遠の問題は、心の中にすこし置いておくことにして。




あの星の謎を暴く


title:発光







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