「うわー…夜遅いのに人結構いるんだなー」
「ほんとだね」

翼にせがまれて、年が明けてすぐに近くの神社へ初詣に出かけることになった。寒いから日中行こうと言っても聞く耳を持たない翼に、半ば引きずられるようにしてここまでやってきた。神社に着いてみると思ったよりも人が多く、年明けということもあってかいつもと違ってキラキラして見えた。翼が嬉しそうに僕の手を引くもんだから、人前なんだけどって言うこともできずに仕方なくそのまま後に続いた。仕方なく…そう思おうとしているだけで、本当は僕も年明けのこの雰囲気に感化されてるのかな?引いてくる手があったかくて、寒いのをふと忘れそうになった。

「なあ梓、何お願いしよう!」
「今年も健康にいられますように、とかが無難じゃない?」
「梓は夢がない!」

お参りの列に並んでしばらくすると僕達の番がやってくる。お賽銭を投げ入れて、二礼二拍手。頭の中で神様に言葉を投げかけたあとに、また一礼。僕が終わって顔を上げたあともしばらく翼は目を閉じて手を合わせていた。

「…よしっと!」

翼のお参りを待って、列から外れゆっくりと神社の中を歩く。翼は満足そうに鼻歌を歌いながら。

「梓はなんてお願いした?」
「教えないよ」
「なんでだよーいいじゃんかー」
「翼が言ったら教えてあげるよ」

ぱっと満面の笑みを浮かべる翼。

「俺は、梓が今年も幸せになりますようにってお願いしたんだぞ!あと、研究費用がもっともらえると嬉しいなとかもちょっぴりお願いしたりもしたんだけど…一番はそれ!」
「だからあんなに長かったのか…」
「つい本気になっちゃった」

ぺろりと舌を出して言う翼、こういうところは年が明けても変わらないみたいだ。

「ほら、俺もう言ったから次は梓の番だぞ?」
「僕?僕は…」
「うん」

期待いっぱいといわんばかりの顔を向けらると次の言葉に困ってしまう…それも翼の話を聞いた後だと尚更。

「言わなきゃだめ?」
「だーめ!」
「…翼が今年も健康でいられますように」

俯き加減でそう言ったら、何故か翼からの反応がなくて、一気に恥ずかしくなる。思いっきり翼のほうを見たらそこには目をキラキラとさせた翼がいて、このまま抱きしめられるんじゃないだろうかと思うほどだった。

「…なんか変なこと言った?」
「言ってない!なんか、梓が年明け一番に願ってくれたことが俺のことだったから、嬉しくって。言葉にならないって、こういうことを言うんだな!」
「恥ずかしいからちょっと黙ってて」
「なんで!そんなのやだ!」
「いいから!」

首に巻いたマフラーに顔を隠しながら、歩調を速めた。翼に追いつかれないように。今年はおみくじなんて引かなくたっていいだろう。だって、見なくてもわかる。今年の僕らは間違いなく、大吉。




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