翼と一緒にコタツに入ってテレビを見ていたはずだった。僕がぼんやりと目を覚ますと、向かい側でまだすうすうと寝息を立てている翼。テレビから聞こえる音は先ほどよりも華やかで、部屋の中の時計をチラリと見たらすでに年が明けていた。

「翼!」
「ぬうー」
「起きて、もう年明けちゃったよ」
「うぬぬぬー」

寝ぼけてぬーぬー言ってる翼の足をコタツの中で蹴ったら、びっくりした様に飛び起きた。

「うー痛いぞ梓…」
「起きないからだよ。あけましておめでとう」
「へ?もう年明けちゃった?」

さっきからそう言っているのに…と呆れた顔をしたら、翼の眉がひどく残念そうにはの字を作った。

「今年になった瞬間におめでとうって言いたかったのになー」
「しょうがないでしょ、寝ちゃったんだから」
「でも言いたかったぞ…」
「…まったく、拗ねてないで言ってくれたらいいじゃないか。僕しかまだ言ってないよね?」
「あ、そうだった!梓、あけましておめでとう!」
「…それ、僕にとっては今年最初に聞いたおめでとうだからね」
「ぬ?」
「だから…!年変わる瞬間に聞けなくても、僕にとっては今年最初のおめでとうだからねってこと…だよ…」

言っててなんだか恥ずかしくなって、語尾が小さくなっていく。翼はさっきのはの字が嘘みたいに目をきらきらさせて喜んでて。単純だなって思う反面ほっとした。こんな一言で翼が笑顔になることに喜んで、翼の笑顔を見て今年もいい1年になるといいなって思ってる。

「梓?なに難しい顔してるんだ?」
「…悔しいから教えない」
「え!?なにそれ!!教えてよ梓!!」
「…やだよ」

コタツの中で足が当たって、笑いあった僕ら。





ふぁーすとすまいる






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