「射弦ー起きろよー年明けるぞー」

うるさい。年明けなんて関係なく、眠いときは寝ていたい。頭に響く藍の声がうっとおしかった。不機嫌そうに目を開くと、そんなことなどお構いなしと言わんばかりの阿呆丸出しの顔で藍が立っていた。

「俺さ、眠いんだけど。ていうか寝てたんだけど」
「折角の年明けなんだから家族そろって過ごしたいだろ?普通」
「藍、家族じゃないし」
「いいんだよ!毎年一緒に年越ししてんだから!おばさんに射弦起こして来いって言われてんだ」
「寝るって言っといて」

寝ぼけた脳みそのままで、再び布団に潜りこもうとしたら藍に布団を引っぺがされた。寒い。温かくなった布団のなかに冷たい空気が流れ込んできて、寒い。寒くて、身体を起こしてみると、勝ち誇ったように藍が布団を握り締めているもんだから、流石の俺でも苛立つ。

「…藍」
「ん?行く気になったか?」
「喧嘩売ってんの?」
「へ…射弦…え…」

藍の顔色がサッと青くなって、少しずつ後ずさりを始めた。

「ご、ごめん射弦…ごめんな?」
「藍、こっちきなよ」
「やだ!」
「なんで」
「だって…お前今すっごい怒ってるだろ!!お前の笑顔怖いんだよ!!何されるか分かんない…!!」

目をうるうるさせながら言おうと、寝るのを妨害した上に俺を苛立たせたんだからそれなりの対応を取ってもらわないと気がすまない。年の瀬にこれじゃ、気分が悪い。

「藍がキスしてくれたら許す」
「やだ!」
「…へぇ」
「だー!もうそういう嫌じゃなくって…恥ずかしさとかとかとか色々あるんだよ俺にも!!」
「人の睡眠妨害しといて、文句ばっかり言わないでよ」
「…射弦って本当に射弦だよな」

言っては見たものの、藍との口論が面倒になったからとりあえず部屋を出て暖かいところへ向かうことにした。布団から起き上がって部屋を出ようとすると、引っぺがした布団を握り締めたままに俺のことをじっと見ている藍。

「ほら、藍。行かないの」
「へ?い、行くけど…」
「さっさとしなよ」
「う、うん」

手に持っていた布団を丁寧に畳みながら部屋の中に置く、不本意そうに藍の口から漏れた言葉を俺は聞き逃さなかった。

「俺、射弦に振り回されてばっかりだな…」

当然でしょ?





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