大学生あずりゅ


『もしもし、宮地先輩ですか』

電話越しに聞こえてくるのはアメリカにいる木ノ瀬の声。年末年始は忙しくて帰ってこれないらしいあいつは、この、あと数十分もすれば日付が変わる時間に電話をかけてきてくれた。

「あぁ」
『日本は今夜中ですよね』
「もうすこしで今年が終わる」
『そうですね。ちゃんと時差を考えて電話かけたんですよ?』
「分かってる」
『宮地先輩と年越しができないなんて耐えられなかったので』
「…」
『あ、先輩、今顔真っ赤にしてるでしょ』
「べっ、別に…してない…!」
『先輩は分かりやすいですから』

言われたとおりに顔を赤くしていた自分が恥ずかしくて、余計に顔の熱が増した。受話器越しということを忘れそうになるくらいに、木ノ瀬が近い。

『あーあ、今頃日本にいたら先輩と一緒に年越しして、初詣に行ったりできたんですよね…』
「忙しかったんだから仕方ないだろう?」
『そうなんですけどね、やっぱり…逢いたかったです。新しい年を迎える瞬間に、傍にいたかった』
「…なんでお前はそういうことをだな…!!」
『だって本心ですし。今年の締めくくりにと思って』
「わざわざそんなことしないでもいい…!」

慌てて返したら木ノ瀬が笑う声が聞こえて、木ノ瀬が声に出して笑うことは少ないからなんとなく嬉しくなる。

『もしもって言い出したらキリがないですね』
「そうだな」
『春には会いに帰りますからね』
「あぁ」
『来年も宜しくお願いします』
「こちらこそ」
『宮地先輩、』
「ん?」
『来年も好きですからね』
「…」
『宮地先輩からも聞きたいな』
「…」
『宮地先輩?』
「会ったときに…言う」
『じゃあ、楽しみにしていますね』

時計の針が12時を回ろうとしている。新しい年の始まりに、好きな人の声を聞いて、それを思って心臓が鳴って、悔しいけれど、とても幸せなことなんだろうなと、俺は思う。




もしもテレフォン


title:発光





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