いづあい

12月、冬がやってきた。冷えた外気に息が白く染まる。この時期になると布団から出るのが億劫で、学校に行くのが面倒で仕方がない。ダッフルコートにマフラーと手袋で完全防備での登校、少し前を歩く射弦の後姿を見つけてそれを追いかけた。

「おはよ」
「…藍か、おはよ」

俺よりも寒がりなくせに射弦はマフラーを巻くだけ。手をポケットに入れて歩くのは危ないからやめろって何度言っても聞いてはくれない。そんなに言うんだったら手袋のひとつでもプレゼントしてくれればいいじゃない、ってこないだ言われた。今はそんなに金がない、ごめんな射弦。

「ん?何お前、風邪引いたの?」

射弦の口元に白いマスクがかかっている。マスクをしているせいか、射弦の垂れた目がなんだかダルそうに見えてしまう。

「いや、別に」
「何でマスクしてんだよ」
「これしてるとあったかいから」
「…あっそ。心配して損した」
「心配してくれたんだ」
「射弦が風邪引いたら雪降りそうだからな!」
「藍、頬赤いよ」
「寒いから!」
「へぇ」

マスクをしていても分かる、マスクの下の口元が悪戯そうに笑ってるんだって。俺も明日からマスクして来ようかな…顔に出やすいのを、少しは隠せるんじゃないかと思うから。なんて思いながらチラリと横にいる射弦の顔を覗き見たら、思いっきり目が合ってしまって、隠したところで無意味なんじゃないだろうかって…思わずにはいられなかった。



隠しても無駄なのです





もどる

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -