「服伸びるから、引っ張らないでほしいんだけど」
「うるさーい!」
射弦の腕を掴んで引きずるように進んでいく。さっきよりも人が増えていて、歩きにくい。後ろで射弦の呆れたような溜息が聞こえるけれど、呆れてるのは俺の方なんだからな!
「なんで射弦はあーやってすぐ絡むのかなー…」
「藍のせいでしょ?」
「そう、俺のせい…は?」
聞こえた言葉に疑問を感じて、立ち止まって振り返ると、何か間違ったことでも言いましたか?とでも言いたげな射弦の顔。何の自信を持ってそんな顔をしているのかと、少し苛立ちながら問いかけた。
「俺が何したって言うんだよ」
「藍が、梓の連れと仲良さそうにしてたでしょ」
「仲良さそうに…?挨拶したくらいだけど」
「それ」
それ、って…。いいやつだなーと思ってよろしくなって握手しただけなんだけど。射弦の目にどう映ったかは射弦にしか分からないけれど、これって、もしかして…。
「お前…ヤキモチやいたのか?」
「悪い?」
「…ふぇ?」
まさかと思って口に出してみたけれど、思いがけない答えに言葉に詰まった。おまけに変な声まで出てしまうし。まさか、まさか射弦がヤキモチだなんて…そう言われたら急に意識してしまって心臓が大きく鳴った。
「梓からかうの楽しかったってのもあるけど」
ぽつりと付け足された一言、おい俺のときめきを返せ。
「ねぇ、藍」
「…なんだよ」
「なんで赤い顔して口尖らせてるのかは聞かないけど」
「別に赤い顔してない…」
「花火、始まる」
俺の丁度背中側の空に花火が上がる。花火の光で射弦の顔がはっきりと見えた。くるりと振り返れば、満開の光の花。打ち上げた時の割れんばかりの音が耳に届いて、情緒たっぷり。
「うわー…でっかいなー」
「変な感想」
「いいんだよ!」
いつも通りの棘のある言葉だけど、その横顔がなんとなく楽しそうに見えたから、ついこっちまで嬉しくなってしまったりして。変な所に勝手に行くと困るから、とりあえず、掴んだ腕はこのままにしておこうと思う。
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翼梓sideで書いたら、いづあいsideも書きたくなってしまったのでこっちに少しだけ。いづあい好きです、口悪い射弦がだいすきです、これただの告白ですね、すみません。笑
しぎみや
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