日曜の昼間、ぼんやりとテレビを見ていると某ねずみの国が10周年を迎えたらしく、その特集が流れはじめた。

「10周年なんですね。あそこって」
「そうみたいだな」

言葉もなくただテレビを見つめていたところにぽつりと乗せるように呟くと、同じようにぽつりと宮地先輩の返事が返ってきた。僕の右側に座っている宮地先輩の横顔をこっそり覗き見したら結構真剣にその特集を眺めていて、メインキャラクターのねずみが出てくるとほんの少し、その目を輝かせた。そんなところを見てしまうとつい、子供みたいで可愛いな、なんて思ってしまう。実際には僕よりも年がひとつ上なのがそんな思いを増長させているのだろうか。

「先輩も、ああいうとこ行きたいですか?」

『恋人同士で遊園地とか、憧れるなぁ』夜久先輩が前にこんなことを零していたのを思い出して面白半分で宮地先輩に問いかけた。正面の画面に向いていた先輩の瞳が僕の方を向く。目を上に下に動かしながら答えを探す宮地先輩。しばらく考えた後に口を開いた。

「いや、別に…」
「あれ?そうなんですか。楽しそうに見ていたから、行きたいのかと思ってたんですけど」
「お前とだったら、こうしているだけで十分だ」
「それって…一緒にいるだけで幸せです、ってことですか」
「な!そ…そこまでは…言って…ないだろう…」

消え入りそうになる語尾をしっかり耳で捉える。一文字も聞き逃さないように。俯き加減になる宮地先輩の顔がね、それで正解だって言っているから。先輩はきっと無意識で言ったんだろうけど僕と一緒に行くことを前提で考えていてくれたということが、すごく嬉しくて、その上、こうしているだけで十分だなんて言葉までもらえて。自然に口元が緩むだけじゃなくて、自分の胸がぽっと暖かくなるのまで分かってしまう。特別なことをしなくても、ただ、こんなことだけで幸せだなって思えてしまう。

「先輩、ありがとうございます」
「何もしていないだろ」
「いえ、幸せな気持ちになれましたから」

余裕ぶって微笑んでみるのは、困ったような顔で頬を染める宮地先輩を見たいから。すぐ横に手を伸ばせば届く先輩の手の上に自分のそれを重ねた。


廻らないメリーゴーランド


title:サーカスと愛人




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