「梓ー!これ食べよー!」
「…また?」
「いーだろー!好きなんだから」

翼から手渡されたのはたまごアイス。ゴムの風船のなかにバニラアイスが入っていて、先を切って口にくわえていると、溶けたアイスがゆっくりと口の中に流れ込んでくる。普通のカップのアイスや棒のアイスと違った食べ方を気に入った翼が、見つける度に買ってくる。嫌いというわけではないけれどこうも毎日食べていたら飽きるじゃないか。それにしても、なかなか見かけないこのたまごアイスを翼は一体どこから買ってくるのだろうか…。袋から取り出して手の中に包むとひんやりした冷たさが掌いっぱいに広がる。

「ほい、梓」
「ん、ありがと」

翼から渡されたハサミでつんととがった先端を切ってすぐに口にくわえた。手に包んであたためておいたからか、溶けたアイスがゴムに押されてゆっくりと口に流れ込んできた。おいしい。ハサミをテーブルの上に置いて、たまごアイスに集中した。なにもしなくても勝手に口に入ってくるから、うっかり口を離していると溢れてベトベトになってしまう。翼がはじめてこれを食べた時はこぼすわ慌てるわで酷くベタベタにしてたっけ。二人してアイスを口にくわえながら無言で食べている、なんとも変な図。

ふと翼の方を見たら目が合った。瞬間、絵で表したら電球マークの一つでも出ていただろう表情を浮かべる翼。何をするのかと見ていたら、口で「う」と「い」の形を作っている。

(うー…いー…?)

訳が分からず首を傾げると同じようにもう一度口で形を作る。もちろんアイスはくわえたままで。

(うー?…あ)

にゅるん。アイスの最後の一口が勢いよく口の中に流れ込んできた。翼の口にばっかり目が行っていたせいで、いきなり流れ込んだアイスにびっくりしてしまった。少し咳き込んでいると、心配そうに翼が寄ってくる。

「むせてるけど…大丈夫か?梓」
「翼のせいだからね」
「あ、なんていってたか分かった!?」
「…さあ」

分かっていたけど、わざと適当に返してみる。でもそれは翼には逆効果だったようで。

「分かんなかったんなら、もっかい言ってあげるぞ」
「え、いい!分かったからいい!」
「ぬー…言いたかったのにー…」

アイスを食べてる時ぐらいふざけないでアイスに夢中になってればいいのに…自分の顔が赤くなってないか冷たくなった掌で冷ましながら、翼を睨んだ。



溶けても消えない愛の言


(梓、すーき!)
(言わなくていいって言ったのに…)





遅くなりましたが、ツイッターでお話しさせていただいたアイスなつばあずです!たまごアイスが食べたい…どこにあるかなー



もどる

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -