「ナミちゃん、さっきから読んでるその雑誌って、ファッション誌?」
「そうよ、エリスも興味ある?」
「うん、見てみたいな」


そう言うと、ナミちゃんは一緒に見よう、といってイスを近づけてくれたので、二人でテーブルの上に置いた雑誌を覗き込む。
麗かな午後。サンジさんの用意してくれたタルトと紅茶でティータイムを過ごしていた。ロビンちゃんは、何やら本を読むのに没頭していて、今日は欠席である。


「これとかエリスに似合いそう」
「ええー、私はこんな肌が見えるやつ着れないよ」
「もったいないわねぇ」
「ナミちゃんみたくナイスバディだったらいいけどさ…。私はこっちの方が好きかなあ」
「ああ、確かにエリスらしいかも」


二人でああだこうだ言いながら過ごすこの時間が、とても好きだ。この船に乗るまで女友達も姉妹もいなかった。だから、こうやってナミちゃんとはしゃいでいると、すごく新鮮な感じがする。
ページをめくっていると、恋愛特集をやっていた。
私が何気なく見入っていると、ナミちゃんがにやりと笑いながら聞いてきた。


「なに、エリス、いま恋してるの?」
「え!違うよ、してないよっ」
「あんた、本当に嘘つくの下手ね…ルフィ並みよ」
「ルフィ君並みって…」
「で、誰が好きなの?」


目をらんらんとさせてナミちゃんは迫ってくる。
ちらりと雑誌に目をやると、確かに女子は恋の話が好きと書いてある。


「好きとかじゃないって、本当に!ちょっと気になるなあってだけで…」
「ふーん、気になる人がいるのね」
「!」


しまった、と口に手を当ててもすでに時遅し。にやにや笑うナミちゃんに、私はがっくしうなだれた。


「言いづらいなら当ててあげるわよ?」
「わ、わかるの?」
「そりゃあ、ね。女の勘ってのは鋭いのよ」


ウインクしながらそう言うナミちゃんに私は内心ひやひやする。
良い当てられたら、きっとごまかせない…。私は目を瞑ってナミちゃんが名前を言うのを待った。


「エリスが気になってるのは……、ズバリ、サンジ君でしょ」
「……えっ?」
「しょっちゅう食事の手伝いに行ってるし、何かと二人で話してるとき多いし。どう?」


したり顔でそう言いあてたナミちゃんに私は心底安心した。
確かにサンジさんは優しいし、かっこいいし、料理は上手いけど。私が好きなのは、残念ながらサンジさんではない。
私が否定しようとしたところで、後ろから丁度サンジさんが現れた。


「ナミさん、エリスちゃん。紅茶のおかわりは?」
「サ、サンジさん!」


あまりのタイミングの良さにびっくりしてしまう。
そして、そういう気はないのに、さっきのナミちゃんの指摘のせいで、意味もなく頬を赤らめてしまった。
それを見て、やっぱりというようにナミちゃんが頷く。


「ち、ちが!これはそういうことじゃなくて…」
「どうかした、エリスちゃん?」
「…!」
「いいのよ、サンジ君、気にしないで」
「よくわかんないが…、なんだったらハーブティーでも持ってこようか?落ち着けるには持ってこいだ」
「う、ううん、大丈夫!ほんとに、なんでもないから…」


私がしどろもどろで説明するのを、面白そうにナミちゃんがみつめていた。
不審そうにしながらもサンジさんは下がってくれた。


「ふふ、緊張しすぎよ」
「ちがっ、緊張したわけじゃなくて…。ナミちゃんが変なこと言うせいじゃん…」
「隠さなくたっていいわよ。大丈夫、絶対言ったりしないから、安心して」
「そういうことじゃなくて………」


しかしそれ以上説得してもあまり進展は見られなかった。
ナミちゃんに誤解されたまま、本日のティータイムは幕を閉じた。



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