いつかきっとその手で


「エース!それ………!」


久しぶりに見かけたエース。ここのところ、エースは私を見かけるとすぐにどこかへ行ってしまい、私は彼の顔どころか姿を見ることさえ少なかった。
この間の上陸で距離が縮まったと思ったのは、私だけだったのだろうか。エースの考えていることがさっぱりわからなかった。親父に勝負を挑みに行く頻度も増えて、やっぱりエースとは分かり合えないのかな、なんて、弱気になっていた時だった。

エースの背中には、私たちと家族になるという証、白ひげのマークが描かれていた。

私の呼びかけに、エースは立ち止まり。振り向いて照れくさそうに目をそらした。


「なまえ」
「私、今すごく嬉しい。この間からずっと、私のこと避けてたし、もうだめなのかと思ってた」
「……避けてて、悪かった」


横を向いたまま、エースはそう謝った。私はううんと首を振る。そんなの、もういい。こうやってエースが私たちと一緒に海を渡っていくことを選んでくれたのなら、それ以上のことはないのだから。


「エースがこのまま船を降りちゃったらどうしようって、ずっと悩んでたの。私、エースと色んな海を旅したい。色んなことを共有したい」


思わずエースの手を握ってそう言うと、エースはビックリしたように目を丸くし、そして頬を赤くさせた。まるで熱でもあるかのように突然真っ赤になったエースに、私まで驚いてしまう。能力のせいで体温が上がったのだろうか、それとも本当は体調が悪かったのか。
私は焦って「熱があるの?」と両手を握ったまま自分のおでこをエースのおでこにくっつけた。


「お、おいっ」
「熱、あるよ。エースすごく熱い。それともこれはメラメラの実のせいなの?」


私は至って真面目に心配してエースにそう聞いていると、近くにいたマルコ隊長が耐えきれないと言ったように吹き出した。


「おい、なまえ。そこらへんにしとけよい。天然も度が過ぎると悪意があるんじゃないかと思えるぞ」
「マルコ隊長?」


マルコ隊長の言葉の真意が分からず首をかしげていると、その隙にエースは私の手を外してさっと何処かへ行ってしまった。
あ、エース。私は彼を呼んだが振り返ることは無かった。


「でも、あいつが決心できたのは、お前のおかげでもあるからな」
「そうですか?でも、エースが自分で決めたことですよ」
「ああ、確かにあいつが自分で決断したことだ。だけど、お前が図らずとも背中を押した部分もあるんだよい」


隊長が何を指してそう言ったのかは分からなかった。だけど、もし私の存在が、エースにとって前向きな結果を出すきっかけになったのだったら、それはとても嬉しいことだと思った。

気が付くとエースは船の先頭で海を眺めていた。「エース!」と大きい声で呼ぶと、大袈裟に肩を揺らして彼は振り向いてくれた。そして、声は聞こえなかったけど、口が動いて何か言ったように見えた。
多分、「ありがとう」と。そう言ってくれたんじゃないかと思う。エースの顔は笑ってて、その笑顔は私の心を明るく照らしていた。


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