「ゾロ、何か欲しいものある?」
「あ?」
「誕生日でしょ、今日」


ゾロは今思い出したかのように「あぁ」と気の抜けた返事をした。
私だって別に、意識して覚えていたわけじゃないけれど。昼寝をしていたゾロは、再び瞼を閉じる。きっと今頃、文句を言いつつもサンジくんはゾロのために豪華なご馳走を作っていることだろう。今夜は宴になる。二人きりで話すチャンスは今しか無いと思って勇気を出して聞いてみたのに、当の本人は今日が自分の誕生日であることすら忘れていただなんて。


「何かくれんのか?」
「まあ、私にあげられるものなら…」


眠ったのかと思ったが、寝転んだままゾロは私にそう聞いてきた。次の島でちょっと良いお酒を買うとか、そういうことなら出来るかなと考えてみる。本当は事前に用意するつもりだったが、ゾロがもらって喜ぶものをイメージすることが出来なかった。


「彼女」
「え?」
「彼女が欲しい」


耳を疑った。もう一度「え?」と聞いたが、大きな溜息が返ってくるだけだった。彼女…?それは、女を抱きたいとか、そういう意味だろうか。そんなの、私に言わなくたって、それこそ次の島でそういうお店に行けば良いだけじゃないか。
揶揄われたのかと思い、私は面白くなくてむすっとしたまま立ち上がった。


「ふざけるなら、いい。せっかく何かプレゼントしようと思ったのに」
「ふざけてねェよ」
「真面目に答えてくれないじゃん」


ゾロは未だに甲板で寝転がったままだった。しかし脇を通り過ぎようとした私の足首を彼はいきなり腕を伸ばして掴み、私は突然のことにバランスを崩し倒れそうになる。床と激突する。そう思ったが、しかし予想に反して私は顔面から転ぶことはなく、いつの間にか起き上がっていたゾロに抱きかかえられていた。


「危ねェな」
「な、誰のせいだと…」


呆れたようにそう言われてカチンとくる。反論しようと顔を上げた瞬間、目の前にはゾロの顔。唇がチュッと軽く重なって、そしてすぐ離れていく。


「………え?」
「お前があげれるもんで、プレゼント、くれるんだろ」


飄々と言ってのけるゾロ。ぽかんと固まった私の顔を見て彼は「間抜け面だな」と言う。
今、私、ゾロにキスをされた……?先程の動きをスローモーションで脳内再生する。確かに、私の唇はゾロの唇と重なった。事故じゃない。あれは、故意。途端、熱くなる頬。慌てて立ち上がろうとしたけれど、腰を掴まれておりその場から動くことなど出来なかった。


「彼女になれよ、お前が」
「は、何言ってるの?」
「そのまんまの意味だろ」


緊張で鼓動が速くなる。ニヤリと笑みを浮かべたゾロは耳元で「顔、赤ェぞ」と囁いた。余裕そうなゾロがずるくて、悔しくて。だけど何も言い返せずに、気が付くとまた重ねられた唇を私は仕方なしに受け入れていた。



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