「ねえ、サンジ君」
「ん?」
「名前、呼んで。私の名前を呼んでほしいの」
「そんなのお安い御用さ」


サンジ君はそう言って少しかがんで耳元で私の名前を囁いた。
彼の声が好き。優しくて甘い声で名前を呼ばれるのが好き。耳たぶをそっと撫でる指がくすぐったくて、私は首をすくめて笑みをこぼす。「くすぐったいって」「ごめんごめん」。和やかな会話、甘い室内。私は上目遣いにサンジ君を見上げる。


「私ね、サンジ君の全部が好き」
「全部?」
「うん。料理を作ってる時も、敵と戦ってる時も、煙草を吸ってる時も。煙草を持つ少し荒れてる長い指や、光に当たるとすっごく綺麗な髪も、ちょっと変なまゆげも目も鼻も唇も匂いも体温も」


言いながら、私はサンジ君に触れていく。見た目よりゴツゴツして硬くて頼もしい腕や私より少し低い体温、私を見下ろす優しい眼差しも、全部全部、好き。
私の言葉に、サンジ君はますます愛おしそうに目を細めて「俺も」と答えた。


「おれの肩までしかない身長も、柔らかくて長い髪の毛も、触り心地が良い肌も綺麗な爪もピンクの唇も。ナミさん達と話してる女の子っぽい表情も、ルフィ達とふざけてる楽しそうな顔も、キスした後の色っぽい瞳も。全部、好き」


サンジ君はそう言って私の目尻に小さくキスを落とした。
少しだけ赤く染まった頬に胸が苦しくなるくらいあふれる、好き。彼の胸に頬をくっつけて心音を聞く。とくん、とくん。サンジ君に抱きしめられて、こうして心臓の音を聞いてる瞬間こそ、幸せそのものなんじゃないかって、私は思う。


「サンジ君」
「なんだい?」
「もう一回、名前、呼んで」


サンジ君は、私の耳に唇をつけるようにして、甘く名前を囁いた。



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