珍しく、イゾウさんがお酒に酔っていた。
上機嫌で仲間と酒を酌み交わしている。今日の敵船との交戦も彼は絶好調で、勝利の宴は深夜になっても終わる兆しを見せない。顔を赤らめてはしゃいでいる姿を見ると、なんだか私も嬉しくなってしまう。ちょっと、可愛いとか、思ったり。普段の落ち着いた雰囲気とは打って変わって、無邪気に笑う姿はとても魅力的だった。

喉が渇いたな、と周りを見渡したがアルコールしかなかった為、甲板から船内へと移動する。厨房でお水を汲んで一杯飲むと、急に眠気が襲ってくる。私はもうこのまま部屋に戻って寝てしまおうかな。誰もいない静かな部屋でそう考えたそのとき、扉が開いてイゾウさんが入ってきた。


「あれ、イゾウ隊長。さっきまで外にいたのに」」
「あぁ……お前が中に行くのが見えたからな」
「私はもう寝ようかと思って…。隊長も、お水飲みますか?」
「悪いな、頼む」


イゾウさんは近くの椅子に腰かけて、ふーと天井を見上げて息を吐いていた。どうやら相当飲んだらしい。ここまで酔っている姿を見るのはもしかしたら初めてかもしれない。私はクスクス笑いながら水を入れたグラスを手渡した。


「何笑ってんだ」
「だって、なんだかイゾウ隊長、可愛いから」
「……ほう」


グビッと一息でグラスの水を飲み干して、イゾウさんは私の手を引いて抱き寄せた。急なことに自分が持っていたグラスを落としてしまう。奇跡的に割れず、コロコロと床を転がっていく。私はイゾウさんの膝の上に向かい合う形で乗っかっていた。


「あ、隊長…っ」
「このおれに可愛いだなんて、生意気な口きいたのどこのどいつだ?ん?」


ちょうど首元あたりにイゾウさんの熱い吐息がかかって、思わず声が出てしまう。そんな私を見て満足そうに目を細める。そしてそのまま、かぷりと首筋に噛みつかれて強く吸われてしまう。肩を強く押して離そうとするが、腰に回った腕の強い力がそれを拒んでむしろさらに彼に密着してしまい体温が上昇する。赤い花が咲いたように色づいた首筋をさらにぺろりとなめられて、私はもう完全に彼のペースに飲み込まれている。


「も、こんなところで…!隊長、酔い過ぎですっ…」
「隊長だなんて他人行儀はよしてくれよ。ここにはおれ達しかいないだろ」


そう囁かれて、今度は耳を甘噛みされる。彼の長い指がそっと首筋から鎖骨までゆっくりと撫でおろしていく。背中をぞくぞくとした感覚が走り、私は思わず彼の腕をぎゅっと掴んだ。耳は彼の熱い舌で犯されていて、体の力がどんどん抜けていってしまう。


「イ、イゾウさん…、こんなとこじゃ…」
「及第点だなァ。さん付けも本当は気に食わねぇが」
「だって、呼び捨てなんて、出来ないです」
「おれはそっちの方が嬉しいんだがな。まあ、お前が呼びやすいように呼んでくれるのが一番だ」


くつくつと笑って私の頬を優しく撫でるイゾウさん。やっぱり、今日は上機嫌。彼は普段から優しいけど、こんなにたくさん笑顔を見せてくれるのは、珍しい。
「さて」と掛け声をかけて、イゾウさんは急に私を抱いたまま立ち上がった。びっくりしておろすよう頼んでも無視されて、横抱きのまま厨房を出て廊下をスタスタと歩いていく。


「え、ど、どこに行くんです…?」
「おれの部屋に決まってるだろ」
「でも、イゾウさん、まだ飲まれるんじゃ?宴だってまだまだ終わってないし…」
「お前を抱くことのほうが、優先事項だな」


あっという間に彼の部屋について、ヒョイとベッドの上に降ろされる。少し乱れた彼の髪の毛が色っぽくて、思わず息をのんだ。
優しく押し倒されて、天井と、彼の顔を見上げる。「シャワーも浴びてないですよ」と恐らく意味のない抵抗を呟いてみる。


「ああ、後で一緒にあびよう」
「もうっ…」
「嫌か?」
「………イゾウさんの、好きにしてください」


目を逸らしながらそう答えると、「殺し文句だな」とこれまた上機嫌に呟いて、優しい口付けが降りてきた。





リクエスト『イゾウ隊長とイチャイチャ』
リクエストありがとうございました。イゾウさん初書きでした。初めてのキャラはいつも難しい…!

彼は今後どんどん新しい情報が出てきそうなので、今からまたさらにワクワクですね。個人的にはどんな戦闘スタイルなのかが気になります。銃がメインのキャラの戦闘描写って今まであんまりなかったような…。楽しみです。



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