「おれ、お前の事好きかもしんねぇ」


突然、ゾロにそう言われた。

放課後、先生に叱られてるルフィを二人で待ってる時だった。ずっと窓の外を見ていたゾロが、いきなり私の目を見て、そう言ったのだ。私はびっくりして、焦って、上手く返事が出来なかった。出来ないまま、ルフィが帰ってきてしまって、結局そのままだった。


それから一週間経った。ゾロからの告白(らしきもの)は、まるでなかったかのように毎日が過ぎた。もしかしたら、あの告白は気のせいだったのかもしれない。それか、好きって言っても、友達としてって意味で、深い意味はなかったのかもしれない。悶々と考えながら過ごす日々は、いつもと違って少しだけ、息苦しかった。


「最近、お前変だなぁ?」
「…年中変なルフィに言われたくない」


授業が終わって、前の席に座っていたルフィが頭を私の机にくっつけるようにして逆さのまんまそう言った。変って、何がよ。そう思っていると、ルフィは言葉を続けた。


「なんか、ゾロとお前、ぎくしゃくしてるっつーか…、いつもと違う」
「え」
「何か、あったのか?」


どきっとした。意識、してないつもりだったけど、行動に表れているとは思わなかった。ルフィは、いつもは鈍感で空気は読めないけど、こういうことには鋭い。私は苦笑しながら言った。


「何にもないよ」
「嘘つくな、何かなきゃああなんねぇよ。ゾロも最近しょっちゅう上の空だし…」
「ゾロが?」
「ああ。それに、よくお前の方見てる。なあ、おれがいないときに喧嘩でもしたのか?」


私の方を、よく見てる。ルフィの勘違いではないことは、分かる。心配そうに私を見るルフィの頭をぽんぽんと撫でた。もしかしたら、事態はそんなに悪くないのかもしれない。


「心配してくれて、ありがと、ルフィ」
「おう!早く仲直りしろよ?」
「うん、そうだね」


私はちらりと、教室の端でサンジ君と口論しているゾロを見やった。彼は、いつも通りに見えたけど、一瞬こちらと目が合って、だけどすぐ逸らされて、やっぱりいつも通りじゃなかったな、と再認識した。


誰もいなくなった教室に、私とゾロは、また二人でお叱りを受けているルフィを待っていた。こうやってちゃんと二人きりになるのは、一週間ぶりだった。お互い無言のままで、ゾロはつまんなそうに窓を見ていたから、私は勇気を出して聞いてみた。


「ねえ、ゾロ」
「…なんだ?」
「この間の、あれ、どういう意味?」


ゾロは少し驚いたように目を見開いて、それからまた目を逸らした。少しの間沈黙流れる。多分、今の伝わっているはず。だって、私達が「変」になった理由は、ゾロのあの発言以外にないんだから。


「ねえ、ゾロ」
「…………、そのまんま、だ」


ぼそりと、ゾロは言った。小さくて、低い声だったから聞きとりずらかったけど。でも、私はその言葉の意味が、私が予想していたものよりはるかに嬉しいものだったから、頬が一気に熱くなった。


「ゾロ、それって…」
「お前は、どうなんだよ」
「え?」
「お前は、おれのこと、どう思ってるんだよ」


頬杖をついて、窓の外を見ながらそう聞いたゾロは、多分私とおんなじくらい顔が赤くなっていた。私は、俯きながら小さな声で答えた。


「ゾロとおんなじ、だよ」
「…ちゃんと言わなきゃわかんねぇ」


少し意地悪な声を出して、ゾロはそう言った。


「ゾロだって、ちゃんと言ってない」
「言ったじゃねえか、この間」
「でも、どういう意味か分かんなかった。どういう意味の好きか、分かんなかった」


私も負けじとゾロを睨むようにそう言った。私達は少しの間沈黙して、やがて、ゾロはまっすぐに私の瞳を見ながら言った。


「好きだ。…友達としてじゃなくて、お前に、惚れてる」


あんまりにもストレートな言葉に、私の方が恥ずかしくなってしまって、思わずうつむいてしまった。ゾロも真っ赤だったけど、多分、私も負けないくらい真っ赤になってると思う。


「おれは言ったぞ」
「…っ、私も」
「…ちゃんと言えって」


私は、膝の上においた手をぎゅうと握り締めた。ゾロはちゃんと言ってくれたんだから、私も、言わなきゃ。すう、と深呼吸して、私は顔を上げた。


「私も、好き。ゾロのことが、好き」


そう言い終えると、眩暈がするくらい恥ずかしい気持ちになったけど、気持ちが通じ合った嬉しさの方が大きかった。この雰囲気にたえられずに、なんだかこうやって真面目に告白し合っている自分たちが馬鹿みたいに思えてきて思わずふっと笑みがこぼれた。ゾロも同じだったみたいで、私が笑ったのを見て、小さく吹き出して、それからルフィが来るまでずっと二人ではにかみあって笑っていた。



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