学年全体が修学旅行の話題で持ちきりだった。私はもちろんユキとエースと自由時間はまわる予定で三人で楽しく相談を重ねる。もうすぐ行われる中間テストが終わったらすぐに旅行だ。みんな勉強そっちのけで旅行のことばかり考えていた。。
私は修学旅行委員になっていたため、その日必要書類をクラスメイトから集めて先生へと届けようと職員室を目指して廊下を歩いていた。学校側と生徒の要望を繋ぐパイプ役としての仕事も多く、先生達と打合せすることも多く忙しい委員になってしまったのはじゃんけんで負けたからだけど、私はちょっぴり下心もあった。少しでもマルコ先生と話せる機会が増えたらいいなと密かに期待していた。

「マルコ先生、いますか?」

職員室へ行ったがマルコ先生は不在だった。先生の机の上に置こうとしたら、近くにいたサッチ先生から「ついでにこれも渡して来てくれ!」と別の書類を預かってしまったために、私は元来た道を戻り、おそらく先生がいるであろう数学科の講師室へと向かった。
扉をノックし声をかけると、中から先生の返事をする声が聞こえた。少しだけ高鳴る胸。私は失礼しますと言いながら部屋へと入った。

「川村か。何の用だ?」
「これ、今日が締め切りだった旅行の書類です。それから、サッチ先生からも渡してって頼まれました」
「あぁ、そうか今日までだったか。サッチのやつ、川村をパシリにしたのか。良い迷惑だったな、ありがとよい」

笑いながら先生は書類を受け取ってくれた。先生が普通に接してくれる。それだけであの時の私の判断は間違ってなかったと思うことが出来た。用事が済んだのですぐ帰ろうとしたが、先生に呼び止められる。

「中間テスト、ちゃんと勉強してるか?」
「あ、あんまり…。旅行のことばかり考えちゃって…」
「だろうと思った。川村は文系だったか」
「はい、そうです」
「受験は必要ないが、テストで気抜くと学部推薦危うくなるぞ。文系数学、大丈夫そうか?」

マルコ先生は私たちの学年の文系数学を担当していた。これまでも先生からみっちり数学を教えてもらってはいたが、やはり不得意科目を得意科目にすることはできず、文系数学でさえあまり勉強ははかどっていなかった。
それをそのまま正直に伝えると、先生は笑いながら教科書といらないプリントを裏返して筆記用具を持ってきた。

「ほら、今ここで特別に数学講座開いてやるよい」
「え、いいんですか?」
「川村が時間あるならな」
「大丈夫です!教えてほしいです!」

間を開けず私はそう返事をする。いい返事だよい、と褒められるほどに。私は先生の隣に腰かけて、久しぶりの近い距離間に少しだけ胸を高鳴らせながら真剣に先生の説明を聞き始めた。



 
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