「今年も同じクラスだね!」
「うん、ユキと一緒でよかった!」
「お、お前らも一緒なのか」
「エース!」


二年生に進級した私は、ユキとともに新しい教室で話していた。そこへエースがやってくる。三人一緒のクラスだなんて、とても嬉しい。楽しくなりそうだね、そう言おうとユキを振りかえると彼女の頬が上気しているのに気付いた。


「一緒になるとは思わなかったから、予想外な分嬉しいな!今年もよろしく!」


にかっと手を出してきたエースに、私も笑顔で握手をし返す。それに対して、ユキはちょっと視線を逸らしながら彼に握手をし返していた。
エースはそれから他の男子の元へと飛びついてはしゃぎだした。彼がいなくなったのを見て、私はそっとユキに耳打ちをする。


「ユキ、もしかしてエースのこと…」
「しーっ!……最近、一緒にいると楽しいし、それでちょっと意識するようになって、そしたらいつの間にか好きになってたんだよね……」
「そうなんだ…!」


照れくさそうにそういうユキに、自分も嬉しくなる。サッチ先生のことは、もうとっくの昔にふっきれたらしい。ユキの視線を追うと、男子達と笑いあっているエースがいて、彼女が恋してるんだなあと分かり、なんだか私まで恥ずかしくなってしまった。


「私、応援するから!」
「うん、ありがとう。七花が応援してくれると、なんだか心強いかも」


ふふ、と笑ったユキは可愛かった。もともと、ユキは結構モテる方だし、きっとエースも彼女の魅力にそのうち気付くだろう。これからの学校生活が楽しみになって、私も思わず笑みをこぼした。


昼休み、ご飯を食べ終わった私は購買で飲み物を買って教室へと向かっていた。ユキとエースは教室で私を待ってくれている。二人きりの時間を増やしてあげようと思い、私はゆっくりと歩いて教室へと向かった。
その時、後ろからぽんと肩を叩かれた。誰だろう、と振り向くとそこにはマルコ先生が笑って立っていた。


「先生!」
「なんだか随分機嫌が良さそうだな」
「はい、今年もユキと同じクラスで、しかもエースも一緒なんです」


にこにこしながら私はマルコ先生と話す。先生は今年はうちのクラスの担任じゃなくなってしまったけれど、今年の私のクラスの数学の授業は先生が受け持っているため接点が全くなくなるわけではない。
それでも、今日こうして話しかけてくれた事が、なんだかちょっと他の生徒より特別な感じがして、私は内心大分舞い上がっていた。


「そりゃまた奇遇だよい」
「びっくりですよね!絶対楽しい一年になります!」
「良かったな。しかし、エースと桂木がいるクラスは騒々しいだろうなァ」


マルコ先生はそう笑いながら言った。笑顔、相変わらずカッコイイ。私は赤くなる頬をちゃんと誤魔化せてるか不安になりながらも、お喋りを楽しんだ。先生は笑いながら話す。


「担任ではなくなるけど、授業で分からないこととか、相談したいこととかあったら、いつでも頼っていいからな。またあの部屋でコーヒーでも入れて話聞いてやるよい」


先生はぽんぽんと私の頭を軽く撫でる。そのことに、きゅん、と私の全身が震えた。たったそれだけの動作に、私の意識は全て先生へと持っていかれる。
うまく喋れなくて、私はそのまま大きくうなずいた。「じゃあな」と手を振って去っていく先生の後姿を見つめる。クラスが離れてしまっても、やっぱり、好き。ただの憧れじゃないって、言いきれる自信はないけれど、少なくとも今先生に触れられて、そして湧き上がるこの感情は嘘じゃないって、そう思う。そう思いたい。

新しく始まる季節に、その時私はまだ、胸をときめかせていた。きっと全てが上手くいく、そんなことを、根拠もなく信じていた。




 
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