隊長を探して甲板へ出るとエースがやってきた。


「大丈夫か?午後休んでたって聞いたけど」
「あー…うん。大丈夫だよ」


そう言って笑うと心配そうに顔を覗き込んだ後にやりと口角を上げてエースは言った。


「まあしょうがねぇって言ったらしょうがないな」
「え?」
「いくらしばらく会えなかったからって、帰ってすぐはそりゃあ体に堪えるだろ」


にやにやと笑いながらエースにそう言われるも、なんのことだかさっぱり分からない。何が帰ってすぐなのだ?ていうか私の事を言っているの?


「なんだよその顔、だって昨日の夜マルコとヤりまくったから今日体調悪くなったんじゃねぇのか?」
「ヤ……!そんな訳ないじゃん!エースのばか!」
「え、違ぇの?」


エースをばしばし叩くと、本当に意外そうな顔をしてくるエース。
隊長とはまだそこまでの関係ではない、それに…。


「違うよ!……それに、昨日の夜隊長は忙しかったから会ってないし…」
「忙しい?アイツが?」
「うん。…本当は私の部屋に来てくれるって言ってたのに、仕事を請け負ったから来れなかったって、マルコ隊長が…」


不思議そうに首をかしげるエースに私は何か変なことでもあるのかと聞くと、意外な答えが返ってきた。


「だって昨日、マルコは親父から頼まれた用事を俺に押し付けて早めに部屋に帰ったんだぜ?だからてっきりそのままなまえと一緒に寝たのかと思ってたんだけどなぁ」
「隊長が…?」


隊長が言っていたことと大分矛盾する。どういうことだろう…、そう考え始めたところで思考回路を遮るように現れたのはマルコ隊長だった。


「余計なこと言うなよい、エース」
「お、マルコ」
「マルコ隊長…」


めんどくさそうエースを軽くしばいて隊長はそう言った。


「なぁ、お前確かに昨日早めに部屋に…」
「エース」


エースの言葉を遮るように名前を呼んで有無を言わさぬ視線でエースをとらえる隊長。


「親父が向こうで呼んでたから、早く行けよい」
「お、おう……?」
「あ、エース」


エースはそのまま向こうへと行ってしまった。私は隊長と二人残されて少々気まずい沈黙が流れる。


「具合は、大丈夫かよい?」
「え?あ、ああ…大丈夫です」
「……目、ひでぇな」


そういって隊長は私の頬に手を置いて親指で私の目のまわりを優しくなぞった。
私はここが甲板だってことを思い出して急激に恥ずかしくなったけど、その手を振り払うことはできなかった。


「あ、の。隊長…」
「…悪ぃ」


隊長はそう言ってさっと手を引いた。そしてまだ仕事があるから、とくるりと背を向けて歩き出してしまった。


「あ、隊長!待って下さい」


私は慌てて追いかけると振り向いてくれた。


「なんだよい」
「あ、いや…。…さっきのエースの言ったこと、本当なんですか?」
「…」


隊長はバツが悪そうに黙り込んだ。


「黙るってことは、肯定って思ってもいいんですか…?」
「…」
「え、隊長?どこに…」


隊長は黙ったまま私の手を引いて船内へと歩き出した。私は少し早い歩調に遅れないよう早歩きになりながら付いて行った。

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