「あ、隊長!」


午前の鍛錬が終わりお昼を食べ終わって甲板へ出ると、丁度一人でいたマルコ隊長を見つけて駆け寄る。
周りにはそれなりに人はいたけど、私はお構いなしにハグをするために地面を蹴ったが、ひょいと身軽にかわされたためそのまま床と激突しそうになった。
慌てて受け身を取ろうとしたものの既に時遅しで、顔からダイブする寸前に隊長によって着ていたシャツの首の後ろの部分を引っ張られたためどうにか激突はしないで済んだ。


「ひ、ひどいです隊長」
「転ぶの回避してやったんだから、普通は礼を言うところだろい」
「私が言ってるのはそこじゃなくてですね…」


今度は「うるさい」と手で口をふさがれてしまい、反論出来なくて結局諦めるとようやく手を離してもらえた。


「むー、つれないです、隊長」
「うるさいんだよい」
「あ、昨日の夜は寝ちゃってごめんなさい」
「昨日?」
「隊長、来てくれるって言ったのに私寝ちゃってて…。本当もったいないことしました、昨日の私を殴ってやりたいぐらいです……」


うなだれながらそう言うと、ああ、と気の抜けたような返事をした隊長。


「別に気にしてないよい。それに、俺も結局昨日は行けなかったし」
「え、そうなんですか…?」
「俺こそ、悪ぃな。他の奴に頼まれちまって、結局部屋戻ったの、深夜だったよい」
「そう、ですか…」


ずどん、と気分が下がる。隊長、結局来れなかったんだ。そうだよね、隊長は忙しいもんね…。
分かってはいるけど、やっぱり落ち込んでしまう。一気にテンションの下がった私を見かねて隊長は腕を伸ばした。が、そこへエースがやってきて、隊長の手は引っ込んでしまった。


「お、何話してんだ?もしかして邪魔しちまった?」
「別に、なんでもねぇよい」


なんでもない…。
隊長とエースは何やら話し始めるが、その会話は耳に入ってこなかった。
何気ない隊長の言葉で、私の心はさらに急降下する。なんでもない、って言われた。伸ばした腕はひっこめられた。昨日の夜は結局来なかった。私との約束が合ったのに、他の人から仕事を請け負った。

ぐるぐるぐるぐる。嫌な想像だけが頭をまわる。なんでこんなに嫌な気分なのだろう。なんでだろう、なんでいきなりこんなに、こんなにも。


「あ、おいなまえ」
「なまえ!」


思わず走り出してしまった。走ってその場を離れた後に、自分が走って逃げたことを認識して苦笑した。一体なんだっていうんだ私は。
その後、隊長とエースから逃げて親父のところに行って体調が悪いと嘘をつき(多分親父はそれに気付いていたけど)午後は部屋で休むことにした。

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