明るい日差しが差し込む。うっすらと目を開けながら、昨日の夜のことを思い出し私は朝から憂欝な気持ちになって、起きようとは思ったものの再び布団の中に潜り込み横を向いた。
横を、向いたら。


「寝坊して、さらに二度寝かよい」
「!?」


視界に入ってきたのは、まぎれもないマルコ隊長。私はあわてて起き上がり声にならない声をあげる。


「たっ、隊長、なんでここに…?」
「なまえがなかなか起きてこないから、呼びにきたんだよい」
「私、そんなに寝てました…?」
「今ちょうど昼になるところだな」


壁にかかった時計を見ると、確かに時計の針はてっぺんを指していた。
私は隊長に謝って急いで起きて着替えようとしたが、腕を掴まれて、私は再びベッドに戻される。


「隊長…?」
「昨日、なんで夜更かししてたんだよい?」
「え、と…。それは…」
「それを言ったら、寝坊のことは水に流してやるよい」


ぐっ、と息が詰まる。
まさか、昨夜の話をまた持ってこられるとは思わなかった。
隊長は、ベッドに腰掛けて、私の目をじいと見つめている。言えない、けど、これは言わなきゃ逃れられない雰囲気だ。
マルコ隊長の瞳が私を射抜く、心臓が、脈を打つ。


「なまえ」
「…っ」


隊長の声が甘く響く。心なしか、さっきよりも顔の距離が近くなっていて。私は、これ以上この状態を保てなくて、一息に言った。


「隊長が、帰ってくるのを待っていたんです。みんなよりも先に…私が一番最初に、おかえりなさい、って言いたかったから……」


顔に熱が集まる。エースじゃないけど、顔がまるで火が出るよう。涙目になっていることがばれたくなくて、私は俯いたままで、だけど隊長はさらにひどいことを言う。


「…じゃあ、なんで待ってたんだよい?」
「えっ」


隊長の呼吸が、すぐ近くで聞こえる。もう半ばやけくそで、私は答えた。


「隊長のことが…、好き、だからです」


言っちゃった…!言ってしまった……!
ずっと秘密にしてたのに、誰にも言ったことのなかった想いを、本人に言ってしまった。
どうしよう、これじゃあもう隊長の近くにいれないよ。下心がある部下なんて、そんなのゆるされるわけがない。隊長だって、私なんかに好かれたって困るだけなのに。傍にいるためには、この気持ちは隠しておかなきゃいけなかったのに。

顔をあげると、マルコ隊長が真剣な目で私を見ていた。
どうしようもない想いがあふれて、私の涙腺は決壊した。


「う、うぅ…」
「わ、おい、泣くなよい」


マルコ隊長が慌てた様子で私の肩を抱いて引き寄せた。
なんでこのタイミングで隊長は私を抱きしめるのだ。ぽろぽろと止まらない涙を流しながら私の頭の中は混乱する。


「悪い、なまえが可愛くて、いじめすぎた。ほら、泣くなよい」


隊長の言葉が、脳の中で反芻される。可愛くて…?私が、可愛い?


「隊長、どういう…」
「帰ってきて一番最初になまえの顔が見れたから、俺も舞い上がっちまったんだよい」
「え…?」
「割と分かりやすかったつもりなんだけどねい…。ちゃんと口で言わなきゃなまえは鈍感だからわかんねえみたいだし…」


それって、それって…。マルコ隊長は、つまり、それは…。
頭が現実に追いつく前に、隊長は言葉を、私の耳元で。


「俺も、なまえが好きだよい」


抱きしめられたまんまで、マルコ隊長が囁いた私の右耳からまるで溶けてゆく感覚だった。
言葉を発せないまんまの私を、隊長は優しく抱きしめながら頭を撫でてくれる。


「帰ってきて、お前が起きて俺の事待っててくれたっていうのが、すごく嬉しかったんだよい」
「…私も、そう言ってくれると、すごい嬉しいです」


ようやくそう言うと、隊長も優しく微笑みかけてくれて、その笑顔があまりにもかっこよくて、また私は溶けそうになった。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -