最近、なんだか自分がおかしい。今までと何も変わっていないはずなのに、ミホークが同じ空間にいるというだけで心拍数がとてつもなく激しくなり、呼吸が苦しくなるのだ。一体どうしたというのだろうか。あの夜、怪我の手当をしてもらってから、私はなんだか変になってしまったのだ。
今日も、いつものようにロロノアと手合わせをしていた。相変わらず彼は私に負け続けていたし、なまっていた体が徐々に感覚を取り戻していくのを実感していたのだが。しかし今日、手合わせの途中でミホークがやってきて、そして視線が自分に向けられていると思った瞬間、急に隙が出来て普段だったら負わないような傷を受けてしまい痛みに顔を歪ませた。
私が彼の攻撃を避けれなかったことに、ロロノア自身が一番驚いているようだった。慌てて駆け寄って「大丈夫か?」と聞かれたが、思ったよりも多く血を失っていたようで近付いてきた彼の顔を見る前に私は意識を手放してしまった。





目が覚めると、私は自室のベッドにおり窓の外は真っ暗になっていた。半日ほど眠っていたのだろうか。そういえば、最近は眠りも浅かった。ミホークのことばかり考えて、中々眠ることが出来なかったのだ。
彼に惚れてから、彼のことを考えることはこれまでも何万回とあったが、こんな風に眠れない程頭を悩ませるのは初めてのことだった。怪我をしたせいでもあるが、久しぶりにゆっくり眠れたことで、頭はなんだか妙にすっきりとしていた。


「具合はどうだ」
「っ、ミ、ミホークさん」


声のする方へ顔を向けると、ちょうどミホークが食事を運んできてくれたようだった。私は慌てて起き上がり、そしてその衝撃で肩の大きな傷が痛みだして顔を歪ませると、彼は呆れたようにため息を吐いた。


「無理に動くな。傷が開くぞ」
「ご、ごめんなさい…」
「謝る必要が何処にある」
「あの、ご迷惑をおかけしてしまって」
「迷惑ではない。だが心配はした」


ミホークは淡々とそう言い、ベッド脇のテーブルに食事を置いてから「傷を見せてみろ」と近くの椅子へと腰かける。私は自分の傷を見ると、確かに包帯にじわりと血がにじんでいるのが見えた。
恥ずかしい。唐突にそう思った。彼からの視線を意識しすぎてしまったことも、そんなことで隙を見せてしまったことも、こうして意識を失う程の怪我をしてしまったことも、全部全部恥ずかしかった。急に顔を赤らめた私を心配して、ミホークは「熱もあるのか」と顔を近づけてきて、それがまた胸を苦しく締め付けて、私は伸ばされた彼の手を振り払ってしまった。


「大丈夫ですから……っ!」


余裕なんてこれっぽちもなかった。一体私はどうしてしまったのだろうか。どうしていきなりこんな、おかしなことになってしまったのか。彼は私の様子を不審に思いつつも、それ以上構うことはせずに席を立ち、「飯はちゃんと全部食べろ。…辛くなったら言え」とだけ言い残して部屋から出て行った。彼の優しさが、嬉しくて心をさらに圧迫させた。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -