何時の間にか静まっていた会場で、私はずっとローを見ていた。
しかし、いきなり何かが天井を突き破って落ちてきた為に会場は再びどよめきだした。立ち上る埃の中に見えたのは、ルフィやここにいなかった麦わらの一味だった。
ロー達も驚いたように彼らを見ている。ルフィはあたりをきょろきょろと見渡すと、ケイミーちゃんと私を見つけたようで笑顔で駆けだそうとした。


「ケイミー探したぞー!!なぎさも一緒なんだな!良かったー!!」
「ちょっと!待て麦わら!」


周りから会場のスタッフなどがルフィを止める為に現れ、そうこうしているうちに会場はパニックに陥ろうとした。
私とケイミーちゃんは一瞬の安堵からまた緊張した顔もちになる。どよめく会場に、不安が再び湧き上がる。私はローの方を見た。彼は私の方をずっと見ていたようで、目が合うと口の動きで「まだ大人しくしてろ」と言ったのが分かった。私はこくりと頷いて、周りの成り行きを見守った。


鳴り響く銃声。音のなった方を見ると、しゃぼんのようなものを頭につけた奇妙な人が誰かを撃ったようだった。
どんどんと水槽の壁を叩くケイミーちゃん。

その時、ルフィの目付きが変わったのがわかった。シャボン玉頭に向かってルフィはスタスタと歩いて行き、強烈なパンチを頬に打ち込んだ。


それは相当予想外のことだったのだろう。再び会場は一瞬にして静まり返った。

ローを見ると、彼はにやりと笑っていた。何故、笑みを………。疑問に思ったが、すぐに彼はペンギンやシャチに何事か指示を出していた。
気が付くと、会場内での大きな乱闘が始まっていた。


切られた水槽のおかげでケイミーちゃんの声が聞こえるようになった。私は彼女に大丈夫かと尋ねたら、泣きながら大きくうなずいた。

ほっとしたところで、近くで私を呼ぶ声がして、顔を上げると何かが私の視界を奪った為に目の前は真っ暗になった。


「なぎさ、無事でよかった」
「…………ロー、さん?」


抱きしめられたという事に気付き、そして耳元から聞こえる声に、それがローであるということがわかった。ぎゅう、と背中に回る腕は痛いくらい。きつくきつく抱きしめられて、だけどそのおかげでさっきまで私の中にあった不安は一瞬にして解けるように消えていく。


「怪我はないか?」
「ない、です。ローさん…」
「なんだ」
「ローさん……っ!」


それまで我慢していた涙がぽろりとこぼれるように落ちる。洟をすすった音に私が泣きだした事に気付いたローが一旦身体を離し、覗きこむように私を見た。


「会いたかった…、ずっとずっと、ローさんに会いたかった……!」


ずっと前と同じように、泣きだした私の目尻を指でぬぐって、ローはもう一度私を強く抱きしめた。


「…ずっと待ってた。もう絶対にお前を離さねぇ。だから、なぎさ」


泣くな、と耳元で囁いた彼の声に、私の瞳からまた一粒涙がこぼれた。

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