32


雨はいつのまにかやんでいた。ミホークさんに手を引かれて城へと帰る。繋いだ手は心地よい暖かさに包まれていた。想いを伝えられた嬉しさと恥ずかしさが、入り混じる。不思議な感覚。まだ、夢の中にいるようだ。

部屋まで送ってもらい、私の少し濡れた髪の毛を見て、ミホークさんは夕飯前に風呂に入れと言った。相変わらず、過保護。でもその理由が、私を想ってくれているからだって、ちゃんとわかるから、くすぐったいような嬉しさがこみあがる。


ミホークさんと別れて、お風呂に入ったあと、髪を乾かしながら部屋に戻った。夕飯まではまだ少し時間がある。私はベッドに腰掛けた。軽い睡魔に襲われて、なんとなくベッドに横になる。
ああ、髪の毛、まだ完全に乾ききってないから、寝たらあとがついちゃう…。そんなことを考えながら、ゆっくりと目を閉じた。


はっ、と目を開けると、窓からは月明かりが漏れていた。起き上がりながら思い出す。そうだ、ご飯前に少し寝っ転がって、それで私、そのまま寝ちゃった……?髪の毛を触って見ると、乾いてはいたがが案の定変な風に癖がついてしまったようだった。
このまま眠りなおそうかどうしようかと悩んだ時、扉をノックする音が聞こえた。びくっとして目を向けると、ゆっくりと開いて、ミホークさんが現れた。


「あ、ミホークさん…」
「なんだ、起きていたのか」
「今、目が覚めたんです。私、寝ちゃったみたいで…」
「ああ、知っている」


ミホークさんは可笑しそうに少し笑った。恥ずかしくなって、私は俯く。あ、そうだ、髪の毛。変な寝ぐせがついてるから、ミホークさんに見られたくないのに…!慌ててペタペタと髪の毛をなでつけていると、また可笑しそうに彼は笑った。


「ククッ…」
「わ、笑わなくたって…!」
「つい、な」
「もう…」
「なぎさが可愛いから、しょうがない」


私の頬が、一瞬にして熱くなる。だけど、ミホークさんはお構いなしにベッドにゆっくりと腰掛けて、先程まで私が撫でつけていた髪の毛を、優しく梳かすように撫でる。


「好きだ、なぎさ」


囁かれる耳たぶが、溶けてしまうんじゃないかと不安になるくらい熱いのだ。私は助けを請うようにミホークさんを見上げる。


「あの、私、こういうの慣れてなくて」
「ああ」
「だから、その…」


嫌な訳じゃない。ただ、ストレート過ぎる愛情表現に、心臓が持たないのだ。上手く言葉を紡げないでいると、唇の横に軽いキスをおとされる。びくっ、とやや大げさに震える身体に、ミホークさんはまた可笑しそうに笑いながら言った。


「ならば、慣れるまでの我慢だな」
「え、あ、そんな…」
「嫌では、ないのだろう?」


少し意地悪そうな笑みを浮かべて、私を翻弄する。想いが通じ合ったというだけでいっぱいいっぱいの私を、ミホークさんは一体どうしたいのだろうか。

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