23


ミホークが戦争に行って、数日経った。届いた新聞を読んで、私はしかめっ面をした。戦争なんか興味はないが、これだけは分かる。どちらが勝ったとしても、世界は大きく変わる。
面倒だな、と私はため息をついて、日暮れが近付いていたので外へ遊びに行ったなぎさを探しに行った。


「おいなぎさ、そろそろ城に戻るぞ」
「あ、ペローナちゃん!」


私の姿を見つけると、嬉しそうに手を振って駆け寄って来たなぎさに、少しだけ頬が緩む。私は可愛いものにしか興味が無い。つまりはなぎさ可愛い。天然すぎるところが少々難だが、ミホークにやるのはもったいないくらいには可愛い。


「ミホークさん、いつ帰ってくるかなあ」
「…さぁな。まだまだかかると思うぞ」
「そっか…」


溜息をつく。この質問は今日だけで三度目だ。時々なぎさは物思いにふけるように空を見上げる。そして視線が元に戻るとこの質問を投げかけるのだ。いい加減うんざりしてくる。これで恋人同士でないというんだから、こいつらは相当おかしいじゃないかと私は確信している。
適当に返事をすると、目に見えて落ち込んだなぎさに私はなんだか罪悪感を感じ、どうにかフォローできないかと考えた。

その時だった。頭上に大きな影が出来て、振り向いた時には遅かった。

物凄い衝撃波にぶつかり、私の身体は吹っ飛んだ。もちろん、なぎさの身体も。
吹き飛ばされて起き上がり、まずはじめになぎさの姿を探した。今の衝撃波がなんだったかなんて、そんな解明は後だ。とりあえず、なぎさの無事を確認しなければ。彼女に何かあったら、ミホークが帰ってきた時に私の命は危うくなるだろう。
辺りを見渡すと、大きな岩の前でぐったりとしているなぎさがいて、私は駆け寄った。


「おい、大丈夫かなぎさ!?」
「う、うん……」
「私の腕に掴まれ、とりあえず、城に戻るぞ」
「ま、待って、そこに人が……」


意識はあるようだが、視線は定まっていなかった。ゆらゆらと揺れながらゆっくりと指先を上げて、なぎさは私の斜め後ろを指差した。
そこには、人が一人倒れていた。緑の髪の毛に、腰にある三本の刀。その姿に、私はさっと血の気がひいた。こいつ、は、確か…………!


「いや、いい。見なかったことにしよう。早く城に戻るぞ」
「え、駄目でしょう。彼も助けてあげなきゃ…!」


なぎさは私の腕を振り切って、緑の奴のところへ駆けて行った。どうしてこんなところで会うのだか。悪縁としかいいようがないだろう。
近付くと、そいつはぐったりと寝ていた。出血も多く、まさに死にかけといったところだった。死にかけの海賊を拾ってもろくなことにはならない。私は再びなぎさの手をひいて離れようとしたが、彼女は首を振って私を睨んだ。
もしかして、こいつを介抱するなんて言わないよな…?
しかし私の願いはむなしく受理されることなく、私は結局なぎさと共にこの緑頭を城内に運び込む事にした。

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