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二人で買い物をして、気付いたら抱えきれないほどの荷物が増えていた。シャボンの中にそれらを入れて、シャボンディ諸島らしい方法で持ち運んでいたが、街ゆく人もその紙袋の多さにやや驚いたようにこちらを見ていた。


「なんだか、たくさん買っちゃったね」
「ここで買っておかないと、次いつ手に入るか分からないからな」
「それもそうだね…。洋服、選んでくれてありがとう」
「当然だろ。買ったんだから、恥ずかしがらないでちゃんと着るんだぞ!」


ペローナちゃんに見立ててもらった服は、今まで来た事が無いような可愛らしい服ばかりだった。そのような服は嫌いじゃないし、むしろ一度着てみたいとすら思っていたのだが、しかし実際に着る勇気なんてほとんどなかった。可愛くない私が着ても、きっと似合わないと思っていた。
だけど、ペローナちゃんは私を可愛いと言ってくれた。だから、少しだけ、勇気が出た気がする。私は買った服の入った紙袋を見た。ミホークさんは、気に入ってくれるかな?それだけが、気になった。

待ち合わせ場所に着くと既にミホークさんは来ていた。私が小走りで近付くと、気付いてくれた。


「存分に買えたか?」
「はい、たくさん買えました」
「金、助かったぞ、ミホーク」


ペローナちゃんも上機嫌でそう言った。彼は付いて来いと言うと、ホテルへと歩き出した。もちろん、私の荷物をすべて一手に引き受けて。あまりにも自然に、私の手から荷物を取って行ってしまったから、遠慮する暇もなかった。ペローナちゃんは「私のも持てよ!」とミホークさんに抗議をしていた。

歩き出した数分後、今日まわったお店の事などをミホークさんに話していると、急にミホークさんが私の方を振りかえり、手をひいて私の顔を胸に押し付けるようにして抱きしめた。そしてその後に続く銃声。急に抱きしめられたことにドキッとしたのも束の間、何が起こったのか、私は真っ暗になった視界の中固まっていた。
すぐ近くでペローナちゃんの声も聞こえた。少し動いて彼女の方を見ると、彼女の周りに白いゴーストのような何かが現れていた。


「おい、下がってろ」
「なんだと、別にこれくらい、私一人で…」
「なぎさを頼む」


ペローナちゃんは下がってろという言葉が少し気に障ったようだが、ミホークさんはペローナちゃんの言葉を遮って私の体を離して彼女に押し付けた。
ようやく周りを見ると、周りには柄の悪そうな人達がたくさんいた。先程まで私がいた先にある建物には銃痕が残っていた。もしかして、さっきミホークさんが私を引き寄せてなければ、私の身体に銃弾が当たっていたかもしれない…。
ペローナちゃんが私の手を握ってくれた。見上げると、馬鹿な海賊共だな、と呟いた。


「お前ら、今一体何をしようとした」
「っ、お前が考えてる通り、そこの女を殺ろうとしたんだよ!」
「忘れたなんて言わせねぇぞ、お前のせいで俺らがどんな目に合ったかを…!」
「随分大切そうに扱っていたからな、その女を。鷹の目を殺るのは難しくても、その女くらいならいけるだろ」


下品に笑いながら物騒なことを言う彼らに私は身震いした。ペローナちゃんがさらに耳打ちをしてくる。「大方、あいつに一度やられた海賊達だろう。ただの逆恨みだな。まあ、なぎさが心配する必要は無いぞ」。私は頷くが、それでも不安になってしまう。周りには、結構な人数がいた。人と人が本当に戦う姿など、今まで見たことがない。恐怖に震えた私に気付いたミホークさんはこちらを振り向いて、手を伸ばしてきた。そしていつものように優しく頭を撫でた。


「ミホーク、さん」
「案ずるな。すぐ終わる」


そう言ったやいな、ミホークさんは背負っていた大きな刀を下ろして、一太刀振るった。海賊たちはかわすが、その太刀の威力はすごく、爆風が生まれるほどだった為、幾人もが避ける際に地面に転んでいた。
圧倒的な力の差に、あっけにとられる。しかし、海賊達はやや怯みながらも捨て身のように突進してくる。私は再び怯えたがペローナちゃんは手をぎゅっと握ってくれたし、ミホークさんは今度は横に剣を振るい、敵をほとんど薙倒していった。
大きな刀を振るうミホークさんは、いつもと違ってなんだか少し怖く感じた。多分、本気ではないけど、彼の覇気みたいなものが、私を圧倒させているのだろう。それでも、その姿は格好良くて、思わず見とれてしまった。
今まで見たことのないミホークさんの姿に、心を奪われる。どうしよう、怖い。だけど、とても格好良い……。見とれていると、ペローナちゃんが「こんな状況だっていうのにお前は…」とぼやいていた。

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