19


「やっと着いた…」
「よし、たくさん服を買うぞ!他にもいろいろ!」


船酔いと格闘した航海が終わり、私達は久し振りの地面に足をつけた。
シャボンディ諸島は、不思議な島だった。いたるところからシャボン玉が浮かび上がってきて、さわってみると思ったよりも丈夫だからびっくりした。こんな植物、見たことがない。
シャボンと戯れていると、ミホークさんがやって来て、私に小さな包みを渡した。中身をみると、どうやら結構な額の現金であった。


「これは…」
「買い物するのだろう、遠慮なく使え」
「えっ、こんなにたくさんですか!でも…」
「いいじゃないか、丁度私も一文無しだったし。恩に着るぞ、ミホーク!」


ペローナちゃんは嬉嬉としてお礼を言っていた。確かに、私達にお金はない。とばされてきたペローナちゃんもそれは同じだ。それでも、こんな大金をもらうなんて、どうしても気後れしてしまう。
そんな私を見てペローナちゃんは、「あいつにとってはこんなのはした金だから、気にしなくてもいいぞ」と私の肩をたたいた。


「お金の世話までしてもらって…、ごめんなさい」
「気にするな。おれは別行動するが、ゴースト娘から離れるなよ。この島は見た目以上に物騒だからな。もし何かに巻き込まれたりしたら、すぐに呼べ」
「は、はい」


ミホークさんは真面目な顔で私にそう忠告して、私が頷くと腕をのばし髪の毛を優しく梳くように撫でた。それからペローナちゃんの方へ向かい、何か話していた。
最近、ことあるごとにミホークさんは私の髪の毛に触ったり頭を撫でたりする。その度に、私の心拍数は上がって頬が熱くなる。
ペローナちゃんとの話が終わったらしく、二人は私の元へ来た。

「宿はおれが手配しておく。17時になったら…そうだな、72番グローブに来い。さっきゴースト娘には言ったが、29番グローブより先には絶対行くな、良いな?」
「くどいぞ、ミホーク」
「はい、わかりました」


私達はミホークさんと別れて、ショッピングモールのある方へと向かった。ミホークさんは政府の人と連絡を取る必要があるらしい。ちょっとだけ、彼もいっしょにお店を回ることが出来たらよかったのにな、と思った。ペローナちゃんは私がそう思ったことを瞬時に察したようで、呆れ顔で「明日にでもまわればいいじゃねぇか。本当、なんでお前ら付き合っていないんだか…」と呟いた。
ショッピングモールに着くと、ペローナちゃんのテンションはさらに上がった。私も、お城の反対側の港町なんかとは比べ物にならないくらいたくさんのお洋服のお店に、彼女ほどではないが興奮していた。
ここは観光客も多く警備もしっかりしているから、比較的安全な場所らしい。ペローナちゃんが教えてくれた。先程ミホークさんが言っていたところは無法地帯となっていて、人身売買のやり取りなどが普通に行われていたりする物騒な場所だそうだ。


「さあ、たくさん買うぞ!」
「うん。ペローナちゃん、私の服も見立ててくれる?」
「当たり前だろ。さ、早く見るぞ」


ペローナちゃんに手を引かれて、一番近くのお店から見に行くことにした。
女の子の友達との買い物だなんて新鮮すぎて、ミホークさんと一緒にいるときとは違う胸のドキドキを感じながら、ファンシーなお店を見て回った。

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