16


ペローナちゃんの怪我は浅く、ここに来た次の日から自由に動き回れるようになっていた。
私はこの城の案内うちに、彼女と打ち解けることが出来た。
久し振りに触れ合う同世代の女の子に、最初は少し警戒心のようなものを抱いていたが、一緒にいるうちにいつの間にか無くなっていた。


「なぎさの持っている服は、地味だな」
「え、そうかな?」
「ああ。スカートすらほとんどないし、こんな地味な服、私は今まで着たことない」


私のクローゼットを物色しながらペローナちゃんは私に容赦なくそう言い放った。そんなに地味かな、とペローナちゃんの言葉に多少ショックを受けつつも私も一緒に服を見る。
身一つでここにとばされたから、ペローナちゃんには私の服を貸している。だけど、彼女曰くこんな地味な服はそろそろ我慢できないらしい。


「でも、私はペローナちゃんみたいに可愛くないから、あんまり女の子っぽいのは似合わないよ」
「何言ってるんだ、なぎさは可愛い。私は可愛いものしか好きにならないからな。それに、可愛い服着た方が、あいつも喜ぶんじゃないか?」
「あいつ?」
「ミホークに決まってるだろ」
「な、なんでミホークさん?」


ペローナちゃんの発言にどきっとして慌ててそう返した。だって、とペローナちゃんは言う。


「お前、あいつの女なんじゃないのか?」
「なっ、ないない!そういうのじゃないよ!」


そう否定すると、ペローナちゃんは驚いたように私を見た。


「違うのか?」
「違うよ!何言ってるの、ペローナちゃん!」
「でも、お前は好きなんだろ?」
「えっ、それは…」


好きか嫌いかで言ったら、そりゃあ好きだけど…。
私は考える。私がミホークさんに対して抱いている感情は、「好き」というものだろうか。今まで、そんな風に考えたことはなかった。誰かを好きになったことなんてないから、これがそういう感情だとは思わなかったのだ。
ペローナちゃんに言われて、私は今初めて「好き」というものを意識した。


「…わからない」
「わからない?」
「ミホークさんのこと、そりゃあ好きだけど。でも、それが恋愛の好きかどうか、私、わからないの」


そう言うと、ペローナちゃんは呆れたように私を見た。


「そんなの、そうやって悩む時点で好きに決まってる」
「そう、なの?」
「ま、どっちにしたってあいつはなぎさの事を好きだろうしな」
「そ、それこそ絶対ないって!」


私は首を振る。そりゃあ、この間のこともあるしいろいろと気にかけてくれたりするし、嫌いではないだろうけど。期待してしまわない訳ではない、だけど、ミホークさんが私を好きだなんて確信を持てるほど私は強くない。ため息を吐くと、ペローナちゃんは言った。


「とりあえず、早急に服を揃えなきゃだな。この近くに店はあるのか?」
「あ、えっと、前に行ったことがある港町なら、ペローナちゃんが好きな洋服のお店もあると思うよ」


行くならミホークさんに言って連れってもらわなきゃ、と私が言うと、ペローナちゃんは「じゃあ私の代わりに頼みに行ってくれ」と言うのでどうして、と聞くとにやりと笑った。


「用があれば話しかけやすいだろ?」
「な、ペローナちゃん、別に私は…」
「私には隠さなくてもいいじゃないか、友達だろう?」


ペローナちゃんはそう言ってクローゼットを閉めて私を振り向いて言った。友達、なの?私は驚いていると、眉間にしわを寄せるペローナちゃん。


「なんだ、お前は私を友達だと思ってないのか?」
「そんなことないよ!でも、いいの、私なんかが友達で?」
「それはどういう意味だ?友達だと、何か問題があるのか?」


不思議そうにそう言うペローナちゃんに、私は首を振った。


「ううん。…そっか、友達か」
「変な奴だな、なぎさは」


友達…。その響きは私の心を暖かくさせた。私なんかが、って思う必要はない。ここは前の暮らしとは違う。私は今、ここにいて、ペローナちゃんと仲良くなりたいと思ったから、だから友達になれるんだ。
私がふふ、と笑みをこぼすとペローナちゃんはますます不思議そうに私を見た。

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