15


「ミホークさん!大変です!」


私はお城のよく使う出入り口に着くと大声で叫んでミホークさんを呼んだ。数秒後、ミホークさんは少し焦ったように私の前に現れた。


「何があった」
「何があったかは分からないんですけど、その、この子が突然…」
「どういうことだ?」


ミホークさんはそう怪訝そうに聞き返したので、私は一歩ずれて後ろにいたヒヒ達を見せた。
そこにいた少女を見て、ミホークさんは少しだけ驚いたような表情をした。

私が一人で城の周りを散歩している時だった。すぐ近くで大きな物音がしたから、おそるおそる近寄って見ると、地面には大きな衝撃波のような跡があって、その中心に女の子が倒れていたのだ。私はびっくりしてとりあえず彼女に近付いてみて、生きているのを確認すると近くにいたヒヒに彼女を背負わせて、城へと運んだのだった。

お城の空いている部屋のベッドに彼女を寝かせて、私は彼女を見つけた経緯を話した。ミホークさんはテキパキと手当をしている。


「衝撃波のような跡…」
「はい、大きな円とあと小さな点がいくつかあって…動物の肉球みたいな…」
「………そうか。この娘の傷は大したことはない、少ししたら目覚めるだろう」
「本当ですか!良かった…」


私は横たわった女の子を見る。桃色の髪の毛をした、まつ毛の長い可愛い子だった。着ているお洋服はとてもメルヘンなものだった。

ミホークさんは一旦部屋から出て行った。ふとこの少女の顔に見覚えがある気がしたが、誰だか思い出せない。
考えていると、寝ていた少女がもぞもぞと動いて小さく何か呟いた。目覚めたのかもしれないと思い声をかける。


「起きた?身体の調子は…」
「ん……、モリア……さま」
「何?」
「うん……?はっ、ここは何処だ!」


何事か呟いたため、私はさらに顔を近付け何と言っているのか聞きとろうとしたところ、突然起き上がった彼女と私の額が激しくぶつかり、軽く火花が飛んだ気がした。


「いたた…」
「な、なんだ今の痛みは…!」
「あっ、ごめんね、大丈夫?気分はどう?」


私はおでこをさすりながらそう尋ねると、彼女は眉をひそめて私を見た。


「お前は誰だ…?そしてここは……」

「えっと、私はなぎさです。それで、ここはえっと……私もよくわかっていなくて。貴女の名前は?その、何処から来たの?」
「…私はペローナだ。私はモリア様の下で………、あ、お前、鷹の目か!」


ペローナと名乗った少女は私の後ろを見てそう小さく叫んだ。振り返ると、丁度ミホークさんが部屋に入って来たところだった。私は立ち上がりミホークさんの傍に行きペローナちゃんがさっき起きたことを伝える。


「ここが何処だか知らないみたいです」
「…なぎさと同じか」
「おい、無視するな!」
「なんだ」
「お前、鷹の目だろう?モリア様は何処にいる!」


どうやらミホークさんを知っているようだった。ペローナちゃんがしきりに言うモリア、って名前も聞いたことがある。私は悩んだが、やはり思い出せなかった。


「知り合いか?」
「いや、でもなんか、聞いたことあるような…」
「おい!私を無視するな!」


ペローナちゃんは再びそう叫んだ。そうだ、漫画で読んだ。彼女はホロホロ言うゴーストを従えていた女の子のキャラクター。私はまじまじと彼女を見る。確かに、記憶の中にあるペローナというキャラクターとそっくりである。


「モリアが何処にいるかなど知らん。興味もない。それより、お前は一体なんでここにいる」
「私だってなんでここにいるのか分からない。だいぶ長い間空を飛んでいた気がするが…モリア様の元に戻れるのか…?」


急に不安そうな声になったペローナちゃんに、私は自分が初めてここに来た時の事を思い出して、思わず声をかけた。


「怪我が治るまでは、ここにいたらどうかな?戻る方法も、ここで見つけたらいいと思うの」
「…いいのか?」
「うん」
「待て、なぎさは良くてもここはおれの城だぞ」


ミホークさんが制止するように言う。私はミホークさんの方を見て、言葉じゃなくて目で訴えてみる。確かに、ここはミホークさんのお城(というわけでもない気もするが)だから、私が勝手に決めていいことではないけど。それでも、私は戻る方法も、というより自分が何故ここにいるのか分からなかったあの時、ここにいていい、と言われてとても安心したのだ。
私がじっと見つめていると、やがて観念したようにミホークさんはため息を吐いた。


「……わかった、なぎさの言う通りで良い」
「良かった、ありがとうございます。とりあえず、怪我が治るまではここにいてね」
「そうか、じゃあ世話になるぞ、なぎさ」


ペローナちゃんはにこりと笑って私を見た。笑顔がとてもキュートだな、と思った。

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