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二人で過ごしたいと言われ、連れてこられたミホークさんの部屋にある大きなソファーの上で私は啄むような優しいキスを享受していた。
可愛らしいリップ音とは裏腹に心臓は苦しいほどに脈を打っている。時折唇を甘く噛まれ、舌先が触れ合うと脳みそがじわりじわりと溶けていくような感覚がした。

「ミ、ミホーク、さん……」
「うん?」
「あの、なんでこんな、キスばっかり……」
「あぁ…もっと深い方が良いか?」

心の奥底で感じていた物足りなさを見透かされたような気持ちになり、私は恥ずかしくて急いで顔を逸らして目を伏せる。
それを肯定と捉えたらしいミホークさんは再びゆっくりと唇を合わせて、舌先を丁寧に絡め取り甘く身だならな口付けで私を翻弄した。
吐息が漏れ、「ぁ……」と小さな声が喉奥から零れ出る。羞恥と快楽の狭間で私はミホークさんのシャツの胸元をぎゅっと握りしめた。

「ふ、っ……」
「なぎさ」

耳元で慈しむように名前を囁かれると全身の力が抜けてしまう。
ミホークさんの大きな手がするりと首筋をなぞり、そして私のシャツの上から胸元を覆うように囲んだ。

「っ……!」
「嫌だったら突き放せ」

低い声が鼓膜を湿らせる。ミホークさんの手は間違いなく私の胸元にあり、こうやって直接的に触られるのは初めてで思わず身を固くしてしまう。
心臓がどれくらいの音を立てて脈を打っているのか、全部ミホークさんにバレてしまう。
彼の手が私のささやかな膨らみを確かめるようにゆっくりと動き始める。大きな手のひらにすっぽりとおさまってしまうようなサイズであることがなんだか情けなくて、服の繊維が隔てる僅かな距離を熱が貫通し、ただ触られているだけなのに脳みそは既に沸騰しそうだった。
触られているという事実だけでいっぱいいっぱいになっている私は多分相当に変な顔をしていたのだろう。眉間にしわが寄っている感覚だけはあった。
そんな私を見て、ミホークさんは再び名前を呼んで耳元で優しい声を落とした。

「今日はこれ以上はしない」
「……今日、は?」
「ゆっくり慣らしていくつもりだ」

手は休まることなく、だけど私を気遣うようにゆっくりと双丘を揉みしだく。時折先端の位置を確かめるように指先が動くと、合わせてびくりと震えてしまう自分の身体が恥ずかしかった。
首筋にキスをされ、それがくすぐったくてもどかしいような気持ちになる。
今すぐ逃げ出したい気持ちとこのままミホークさんの愛を享受したい気持ちでせめぎ合っていた。

きっと、私が本気でイヤだと言えばミホークさんはやめてしまうから。だから、身を捩ることもできなかった。
キスのその先を教えてほしいと言ったのは私で、こうやって触ってもらうことを望んでいたのだと私はこの瞬間確かに実感していた。
そして私がそんな風に葛藤を抱きながらも彼に愛されたいと思っていることを、ミホークさんがちゃんと理解してくれていることも同時に分かっていた。

手持無沙汰になっている自分の腕をおずおずと彼の首に回すと、ミホークさんは少し驚いたように目を見開いてから再び柔らかなキスを交わしてくれた。



 

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