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重なった唇は体感1秒ほどで離れて行ってしまう。短いキスに対して物足りなく思ってしまう自分の感情が恥ずかしくなり、私はぎゅっと目を瞑り顔を逸らした。

「それほどおれが嫌か」
「…え?」
「それとも、おれじゃない男なら避けずに受け入れるのか?」

ミホークさんの問いかけの意味が分からず私は戸惑いながら彼の顔を見ようとした。しかし顔を戻した瞬間に再び降ってきた唇は先程の優しく触れるだけのものではなく、荒々しく噛み付くようなキスはあっという間に私の狭い口内を犯し尽くしていく。

「んっ、ふ、ぁ」

漏れ出る声が自分の声とは思えなくて、私は必死にミホークさんの肩を押して抵抗しようとしたがその手は容易く彼によって捉えられ胸の前でひとまとめにして押さえつけられてしまう。初めて味わう感覚が頭の奥をぼーっと揺らしているようだった。上顎の内側を舌先が触れるたびに体が震え、それを気持ちよく感じてしまっていることを悟られたらどうしようという不安が頭をよぎる。こんなにも激しいキスは初めてで呼吸の仕方さえ分からず酸素を求めて口を開くと、さらに深く舌が張り込み唇の端から混ざり合った唾液が零れ落ちて行くのを感じた。

「ミホーク、さん、っ」

必死に名前を呼ぶが勢いは止まらず、それどころかミホークさんの手がシャツの隙間から入り込みお腹のあたりをすべるように撫でてくる。突然素肌に感じた彼の体温に私の羞恥心はキャパオーバーとなり、渾身の力で体を振り切ろうと身を捩った。

「や、だっ!」

いつの間にか涙までこぼれていたらしい。何故いきなりこんなにも強引にミホークさんが迫った来たのか分からず、そしてこの激しいキスや素肌をなぞる指先を心地良いと感じてしまったことがショックと同時に恥ずかしくてたまらなかった。
ミホークさんの手が離れた瞬間に私は大急ぎで体を起こし壁際へと逃げるように身を寄せた。肩で息をしながら涙目でミホークさんを見つめると、彼は気まずそうに私から目を逸らした。

「ミホークさん、私…」
「すまなかった」

伸ばしかけた手は振り払われ、ミホークさんはベッドから立ち上がった。

「頭を冷やしてくる」

一度もこちらを見ずにミホークさんは部屋を出ていてしまった。パタンと閉まった扉に、安堵と同時に先程の激しいキスの記憶が脳内で生々しく浮かび上がる。
ミホークさんは一体どうしていきなりあんなことを……。今までとは違う乱暴なキスは、確かに怖かったけれどそれよりも襲いくる快感の方が強く印象に残っていた。
自分も立ち上がろうとして足を動かした時に下着が濡れていることに気付き私は顔を真っ赤にした。なんでこんな、はしたない……。たまらなくなった私は慌てて部屋の横にあった浴室へと駆け込んだ。


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